『あたしね・・・もう一度大好きな日本舞踊を踊ってから死ぬの。』
もう、かなりのご高齢でもあり、ご病気の都合もあり舞踊は医師からは止められていた。
おばぁちゃん自身も体力の低下や膝の痛みを感じておられたし。
『おかしいでしょ?』
といって、顔を歪めて笑って。
『こんなシワクチャのおばあちゃんが女郎役を演りやいっていうんだから。ウフフ』
いかにも楽しそうに語っておられた。
子供の頃・・・
農家に生まれた彼女は、両親に内緒で舞踊を習いにいったらしい。
目を輝かせて。
お忍びで舞踊を習う彼女の姿が目に浮かぶ。
もう、だいぶん年を取られて、踊ることも苦痛になったのだけど、おばぁちゃんは踊ることをやめなかった。
そんなおばぁちゃんの身体も限界に近づき
おばあちゃんは亡くなられた。
おばぁちゃんの「もう一度」は、聞きいれてもらえなかった。
ねぇ
踊りをみることができなかったけどさ。
あの世ってあるとしたら
そこでもきっとあの笑顔でおられるに違いないと
そう思う。
ただただ、手を合わせてご冥福を祈ります。
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