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窓際に

理学療法/病院

「寝たきり」の状態になると、身体はドンドン衰えていく。

だから、寝たきりの状態から抜け出さないといけない。
そもそも「寝かせきり」だったのではないか・・・?

そういう議論があって、医療や介護は「寝たきり」からの脱却を試みた。

けども、お次は「座らせきり」だった。

「離床」というのは考えられたものの
ベッドの上か、椅子の上か、の差でしかなかった。

だから、「座らせきり」も見直されるようになってきた。
そもそも、座りっぱなしってのも辛いもんだ・・・

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看護師さんが窓際におばあさんに声をかけた。

「大丈夫ですか?横になりましょうか?」

おばあさんは窓際でずっと座っていた。
看護師さんは長い間座っていたおばあさんのことを心配したのだ。

おばあさんは言葉を話すことに問題を抱えていたため、その若い看護師さんの声かけに返事をしかけて「あ・・・あぁ・・・」と言ったきりだった。

ゆっくりだと話せるけども、唐突には言葉が出ない。
それに、単語が出にくいから、何度も言い直しをして、それからあきらめることを繰り返しておられた。

「また後できますからね」

と看護師はおばあさんの背中に声をかけて病室を出て行ってしまった。

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看護師は心配していた。

おばあさんが長い時間、窓際に座らされていることを。

しかし、本当は違った。
何が違うって、「座らされていた」んじゃなくて、「座っていた」んだから。

おばあさんは自分から窓際を指差して、そこに連れて行ってもらったのだし、窓から見える懐かしい町をずっとずっと眺めていたかったのだ。

そして、若い看護師さんたちに、自分がみてきた町のことをあれこれと話がしたかった。

生まれ育った町は畑だけだったのが、いまはビルが建って町になったこと。

自分の郷の方向がこの窓から見えること。

よく買い物をしたお店があること。

大きな窓から一望できる景色から、自分の育った時代を話することが出来た。

・・・そう考えておられた。

だから、いつまでもここに座ってみんなに話しかけられたかったんだけど、ほんの数秒の時間だけ現れるスタッフは、「大丈夫ですか?もう横になりましょうか?」と心配の声をかけるだけ。

「この窓からは、いろいろなものが見えるんだよ」って言いたいのに、いつも言葉が出てこない。

心配されるよりも、「眺めがいいですね!」って言ってほしいのに。
横に座ってくれたら、ゆっくりとこの町の話をしたいのに。

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そう思って、おばあさんの横にイスを置くことにした。

窓際のおばあさんの最初のお客さんは、
僕だった。

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参考

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コメント

  1. yuuka より:

    わかります
    寝かせきり、座らせきり共感します☆
    折角座ったのに職員同士のコミュニケーションとれていないとこうなりますよね

  2. kazz より:

    re:わかります
    >yuukaさん

    コメントありがとうございます!
    &共感ありがとうございます。

    スタッフ間のコミュ二ケーションって難しいですよね。

    とれてるつもりで、とれていないこと、多いですから・・・

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