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夜の病室訪問

勉強会が終わり、自分の仕事を有る程度を済ませてから、ICU(集中治療室)に向かう。

フットスイッチで自動ドアを開けて、ICUに入る。
ここの自動ドアは独特の開閉音がする。

僕の担当させている患者さんは、意識がはっきりとせず、かといって昏睡でもない状態。

離れたベッドには救急で運ばれた患者さんがおられる。

医師と看護師が周りを取り囲んで、手を握り励ましている。

僕は担当の患者さんと話をして

消化器外科の病棟におりる。

おばあさんの病室に行くと、おばあさんは大きな丸い眼を開けて僕に気がついた。

「あら、こんばんわ~大丈夫ですよ~」

元気に挨拶してくれる。

でも、きっと一生懸命挨拶してくれたんだと思う。
声が揺れてたから・・・

せっかく休んでいるところだったのに、体力使わせてしまったな・・・

通りすがりに、別のセラピストが担当の、お嬢さんのところへ行く。
以前入院されてた頃に、僕も数回リハビリを行う機会があった。
今回は別件で入院されているとのこと。

話すことは何も無いけど、挨拶したかった。
大変なこともたくさん有るだろうけど、頑張ろうと伝えた。

その足で整形外科の病棟に向かう。

明日、病棟の移動を迎える患者さんのところ。

明日から新たな病棟で過ごすことになったおばさんは
「順調!順調!」と言われているけども、不安もあるだろうな・・・

別の部屋にいるおじいさんは
最近やる気を取り戻して、歩く練習をされているので、疲れすぎていないかを聴きにいった。

先週とはうって変わって顔の色つやがいい。
これなら、安心だ。

隣の神経内科・脳外科の病棟に行くと、トイレから僕の担当のおじさんが看護師をからかっている声が聞こえる。
声をかけて、部屋へ連れて帰る。
看護師さんはコールに追われていた。

同室の別のおじいさんは、退院を控えていて不安はなさそう。
だけど、声をかけてみると「さて、どうなることやら・・・」と口を結んでいた。

なかなか機能回復の進まないおばあさんの部屋に行く。

おばあさんははじめっからで出入り口を見つめていたらしく、すぐに目が合った。
看護師さんの手厚いポジショニング(姿勢を整える技術)によって、おばあさんは安楽な姿勢を保っていた。

階段を下りてリハビリ病棟へ行く。

静かな暗い部屋に、眼を開けて一点を見つめている患者さん。

この患者さんは声が出せないし、意思の疎通も行えない。

じっと暗闇を見ておられる・・・

声をかけると、無表情に僕を見た。

別棟に向かい、もうすぐ100歳になるおばあさんの部屋を覗く。

もう寝ちゃってるな。
もう夜だし起こす必要もあるまい・・・
おやすみなさい。

階段を下りて、処方が明日出されるはずのおばさんの所に行った。

眉間に皺を寄せたまま寝ておられる。
眼を閉じているだけかもしれない。

カーテンをそっと引いておいた。

詰め所には、鮮やかな紺色の紫陽花が生けてあった。

それを眺めて、帰ることにした。

明日は休暇だ。

コメント

  1. とろち より:

    シミジミ…。
    そんなPTさんの動き、心強い、嬉しいって思う患者さん、たくさんおられると思います!

  2. kazz より:

    >とろちさん
    ありがとうございます。
    知識を深め、技術を磨き、患者さんの利益となれるように頑張りたいと思います。

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