病院の長い渡り廊下の外のサクラも、少しずつ花を咲かせている。
満開になり、患者さんたちを喜ばす時も近かろう。
夕方近く・・・
整形外科に入院しているおばあさんの所に向かった。
狭い6人部屋ながらも、整形外科ならではの「口は元気」なオバさまたちがにぎやかに迎えてくれた。
一人寂しそうにしているのは、僕が担当している太ったおばあさん。
認知症もあるのだが、それ以上に活動性が乏しいことが気になるおばあさん。
このおばあさんは、整形外科的な部分も、その他の病気も患っておられて、より不活発な状態だ。
天井を見つめて動かない。
寂しくなると(いつも寂しいのだろうが)、お父さんを呼ぶらしい。
なので、僕が病室に入ると、まわりのオバさんたちが
「よかったねぇ、先生いらしたよ!待ってたでしょぅ?」
といって、おばあさんを励ましてくれるのだ。
おばあさんも、僕を見ると、まんまるな目で笑顔を作り
「いらっ・・・しゃい」
とゆっくりゆっくり言ってくれる。
治療を終えた後に、部屋のベッドに帰り、
「また、明日も来るからね!」
って声かけをすると、まゆ毛を「ハ」の字にして
「また、あとできてね・・・おとうさん来ないの・・・」
と言われる。
この、丸い顔と、ゆっくりとした話し方でこう言われると・・・
ほっとけないね(笑)!
「じゃぁ、また(あと)来るから待っててね」
って約束した。
周りのオバ様たちも、コントロールされている僕をみて笑っておられた。
で、夕食が終わったあたりに、また行くと
「いらっ・・・しゃい」
とまた、満面の笑顔。
「いい笑顔だよね~!」
て言うと、
「わたしね・・・あなたが来ると・・・笑顔になるの・・・ほんとよ」
だってさ!
嬉しいね~!
サクラが咲いたら、このおばあさんを連れ出してさ・・・写真でも撮ってあげたいな。
おとうさん来るかな?
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