昨日は、この世のものとは思えないつまらない研修会に参加した。
研修会を終えたのは夕方で、
帰りの列車に乗ろうと駅についたものの、発車までは30分以上もあった。
駅には本屋がある。
いつも駅にいる時は夜中か早朝なので、この本屋に向かうことはなかったが、時間つぶしも兼ねて足を踏み入れた。
店内をグルリと回って最終的に目に留まったのが太田光の処女小説だった。
■マボロシの鳥
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この本は、発行時から読んでみたいと思っていたが、どうやら、初版を手にすことなく時間が過ぎていたようだ。
すでに4刷。
太田光と言えば、芸能人。
爆笑問題のボケ役なのだが、僕にとっての太田光は、そういう芸能人のイメージがあまりなかったりする。
賛否両論の政治論争
読書家
といったイメージが強い。
政治的な思想においては、どちらかというとこの人には賛成しかねる部分がある。
しかし、尚も嫌いになれないのは、この人の読書家としての態度が好きだからだ。
この本を本屋で手にとったとき、金色の帯に書かれてある文字に目がとまった。
『ここに似たどこかで、僕たちに似た誰かに起きた<9つの奇跡>』
この『<9つの奇跡>』の部分には『ナイン・ストーリーズ』とルビがふってある
『ナイン・ストーリーズ』といえば、「ライ麦畑でつかまえて」を書いたJ.D.サリンジャーの小説だ。
それにならったのか偶然か分からないが、この本には9つの短編がおさめられている。
また、サリンジャーがそうしたように、この本には著者の写真が飾られることもなく、「あとがき」や「解説」もない。
「芸能人が小説を書きました」といったのとは、すこし風体が違うと思った。
YouTubeでの動画でも太田光の読書に対する姿勢が確認できる。
「太田光 人生を変えた一冊」という動画。
太宰治の『晩年』、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』、サリンジャーの『フラニーとゾーイ』、ヴォネガット『タイタンの妖女』
それらについての太田のコメントは確かに読書家だ。
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今日は、予定のない日曜日なので、落ち着き、気分よく読書ができた。
太田光のナイン・ストーリーズを堪能できた。
時にわざとらしく不器用な文章に引き込まれてしまった。
感動というのとは少し違う。
恋愛小説の切なさとも違う。
大切な美しいものを傷つけることで、その存在を確かめるような作業が繰り返されている。
時に嘲笑されることで大衆を嘲笑する太田がいる。
人間らしい暖かさがある。
ひさびさに良い小説を読んだと思った。
おそらく、このこの<ナイン・ストーリーズ>が伏線となり、新たな物語がつくられるだろうと思う。
それもまた楽しみだ。
参考
YouTube:太田光 人生を変えた一冊1/3
YouTube:太田光 人生を変えた一冊2/3
YouTube:太田光 人生を変えた一冊3/3
コメント
お疲れ様です。
実にならない、つまらない研修会でも、
参加したことでこの本と出逢えたのなら、
それはまた意味があることではないでしょうか。
それは、考えすぎですか?
私も、その本には興味があります。
ここ数年、まともに読書をしていません。
久しぶりに本腰いれて読書しようかなぁ。
re:お疲れ様です。
>Sotさん
おっしゃるとおりで、このホントの出会いはこの研修会のおかげです。
さらにいえば、この本の内容が身にしみたのも、この研修会の大人びた(つまらない)性格のおかげだと思います。
「実に厄介で、面倒で、世界はいつでもドタバタだ。」(本文より)
ぜひぜひ読んでみてください!
突然のコメント失礼致します。
>大切な美しいものを傷つけることで、その存在を確かめるような作業が繰り返されている。
このコメントにはっとしました。
共感いたします。
傷つける側も無傷ではいられない、それでもそうせずにはいられない、不器用さというか、一生懸命さというか、そんな気持ちの詰まった1冊のように感じました。
re:突然のコメント失礼致します。
>こごとさん
コメントありがとうございます。
そして、共感ありがとうございます。
「マボロシの鳥」のおさめられた9つの短編は、本当によい小説だったと思っています。
次回作を期待したいのですが、サリンジャーのように隠遁してしまったりして・・・なんて考えてしまったりします。
またいらしてくださいね!
太田さんらしい
小説「マボロシの鳥」を読みました。
著書は 太田 光
読書家としても知られる太田さんの処女小説
エッセイ等は読んだことありますが 果たして小説では・・・
9つの短編集
どれも色が違くて
SF的という、ファンタジーというか
しっかり小説として読め
読みやすさもあ….