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涙が出たこと

涙が出た。

形容ではなくて、本当に涙が出た・・・

たまたま、個室だったので部屋のすみへいって、患者さんのティッシュをもらって涙を拭った。

患者さんは、僕の担当のおばあちゃん。

約半年前・・・

おばあちゃんを介護しているのはおじいさん。
典型的な老老介護。

重たい病気で、後遺症もあったのだけど、おじいさんの熱心な介護もあり、順調に回復。

なんとかかんとか、歩くこともできるようになった。

おじいさんはウチの病院にいたかったのだけど、あとはリハビリと生活がメインの課題ということで退院の運びとなった。

うちは急性期病院なので、初期の治療が一段落つけば、退院の方向となる・・・

計画としては一時、家に退院され、少ししてから別の病院へ入院されることとなっていた。

つかの間の在宅生活は2週間。
そして、予定どおり別の病院へ入院。

それが、約半年前

・・・

そしてしばらく経って

再び具合が悪いということで、うちの病院に再度入院してこられた。

リハビリ処方を受け、久々におばあちゃんの個室へ・・・

部屋には、寝たきりのおばあちゃんがいた。

足は拘縮(=関節が固まっている)を起こして、もはや地面を踏ん張れるような状態ではない。
それどころか、おばぁちゃんはまったくの「寝たきり」になってしまっていた!

真横になったきり、声をかけても反応を示さない、おばあちゃん・・・

カルテにも「痛い」と発話があるのみだということが書いてあった。

半年前には介助歩行が可能だったはずなのに・・・

横向けのまま動かないおばあちゃんの顔をみると、目はうつろで一点宙を見ている。

声をかけても反応が無い。

悪いことだけど、こう思ってしまった。

『なんで、こうなってしまったんだ。前の病院では何をしていたんだ』

おそらく・・・だけど、前の病院では十分なリハビリは受けられていない。
(↑後にこれは真実であることがわかった)

「寝たきり」というか、「寝かせきり」にさせられていたのではないかと・・・そう思ってしまった。
(↑後にこれも真実であることがわかった)

もちろん、見たワケではないので、前の病院でも一生懸命なアプローチはされていた・・・のかもしれない。

それにしても、おばぁちゃんの状態は悪すぎた・・・

寝たきり・・・
寝かせきり・・・
寝かせられきり・・・

『なんでこんなことになったんだ』

って思ってたら、涙が出てきた。

形容ではなくて、本当に涙が出た・・・

たまたま、個室だったので、部屋のはすみへいって、おばぁちゃんのティッシュをもらって涙を拭った。

なんだかわからないけど、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったんだ。
僕がどうこう帰られる問題ではなかったのかもしれないけど・・・
なんだか、申し訳なさでいっぱいだった・・・

そのとき
偶然かなんだかわからないが、おばあちゃんが突然、声を上げた!

「せんせぇ~」

声はか細く末尾で消えたけど、たしかにそう言った!

確認する思いで
すぐにおばぁちゃんの顔を覗きにいったが、二言目はなかった。

だけど、確かに声を聞いたのだ!

おばぁちゃんは「せんせぇ~」と言ったんだ。

「せんせい」が誰のことかわからない。
僕のことかもしれないし、主治医のことかもしれないし、記憶の人かもしれない。

でも、確かに「だれか人を呼んだ」のは確かだ。

「助ける」

そういう言葉は謙虚さに欠けるかもしれないけど、その時はそう思った。

今すべきことは、この目の前のおばあちゃんを「助ける」ことだと。

深い海の底から引き上げるような働きかけをしなければならないと感じた。

それがリハビリテーションだと感じた。

・・・

そうして
涙が出てから約1か月が経った。

おばぁちゃんは車いすで座る生活を始められるようになった。

会話も可能になってきた。

独りで座る練習も始めた。

まだまだ続く。

そう信じている。

コメント

  1. ま~ より:

    Unknown
    大勢の患者さんをみる中で
    なかなか大変なことでしょうが、
    献身的なスタッフの介助が何よりの助けになると
    思います・・・

    現場を知らないま~が言うのも何ですが・・・
    これからもがんばってください

  2. p より:

    Unknown
    私は草花を愛する男。
    ちょい、キモい?

    プランターの草花を地植えする際のこと。
    地植えし、うまく根付かないことがある。
    原因はイロイロ。
    枯れてしまうこともある。
    環境の変化に対応できないのだろう。
    でも、再び環境を変えたり、手をかければ
    また、生き生きとし、花を咲かせることもある。

    まだ、枯れたわけではありません。

    再び花を咲かせることができるのではないでしょうか?

  3. ひらかな より:

    いいですね。
    その熱さが好きです。
    考えてみれば、当たり前のことなのに、
    継続することは難しい。
    また、それを継続する環境を作ることも
    難しいですね。
    セラピストでありながら
    一人間として、
    人とどう関われるかが大切なのだと思います。
    その当たり前の根本があるからこそ、
    知識や技術は生かされる。
    頑張ってください。
    私もこっちで頑張ります。

  4. まいける より:

    Unknown

    うちはおばぁちゃんの力とkazzさんの力を信じてます。
    またいい報告を待ってます。

  5. kazz より:

    みなさま!
    みなさま
    コメントありがとうございます!
    おばぁちゃんのパワーアップ(?)めざして頑張ります!
    日々、状態も良くなってきている印象を受けます!

    おばぁちゃん強い!!

    みなさんのコメントにも助けられています!

    >ま~さん
    ありがとう!
    がんばりまする!
    現場を知らなくとも、助けになります!

    >pさん
    失礼ながら風貌からは想像できませんでした!
    草花を愛する男だったなんて!

    そうですね・・・
    花、咲くといいな!
    よい土壌を提供できるように頑張りたいと思います。

    はじめっから、お年寄りを「枯れた」という目で接してしまうと「枯らして」しまうような気がします。

    >ひらかなさん

    「熱さが好き」って、ありがとうございます!

    ほんと、継続が必要ですね!
    そして、「人間として」っての僕も重要だと思います!
    こういうこと(理学療法)を職業にしてしまうからこそ見えなくなってしまうものも歩きがします。
    立ち戻る勇気も必要になります・・・

    頑張ります!

    >まいけるさん
    ありがとうございます!
    いい報告ができるといいな!

    力(ちから)
    大切です!

  6. p より:

    Unknown
    ち、ち、ちっ。
    人は見かけで判断するもんじゃ、ありませんよ~~~。
    単なる酒飲みではありませ~~~~ん。

  7. kazz より:

    >pさん
    失礼しました(笑)!
    草花を愛する酒飲みさんなんですね!

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