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わるい添書

患者さんが転院される.
珍しくすこし遠くの病院だ.

ご家族や本人,移る病院の都合もあり急遽転院が決まってしまった.

脳卒中を患われ,半身の自由を奪われながらも,リハビリを進めてやっと歩く練習を進めてきたところだ.

■添書(テンショ)

というのがある.
移る先の病院に対して,今までの「経過」や「現状」を伝えるための病院スタッフ(セラピスト)のための申し送り.

今日の朝,添書をみて愕然とした...

添書には,ともにリハビリをすすめていた作業療法士のコメントも当然ある.

あるのはあるのだが,

内容が・・・
無いよぅ・・・

なんて駄洒落(ダジャレ)も思いつくほど・・・内容がない.

どころか,情報に誤りすらある.

A4用紙に数行にわたって書いてある文章にはほとんど内容がなかった.
とてもセラピストの書いた文面とは思えない.
(僕も文章が苦手だが,それどころのレベルではなかった!!)

赤ペン添削してその作業療法士に渡そうと思ったが,添削途中にあきれかえってしまってヤメた.
直接話すコトにした.

その作業療法士の記載内容はこうだった.
・感覚鈍麻
・痙性(ケイセイ)が出てきている
・食事は一人で食べている
・トイレの際にズボンの上げ下ろしが出来ない

まず・・・「感覚鈍麻」
患者さんは感覚鈍麻(感覚が鈍くなる)ではなく,感覚脱失(感覚がない)状態だ.
なぜ,「感覚鈍麻」と書いたのか聞いたが,検査さえしていない状況だった.
(゜Д゜ )ハァ?
検査もしていないのにどうして,「鈍麻」と思われるのですか?

そして,「痙性」.
これは,手指の屈曲活動が出たことを,このように表現したらしい.
筋緊張の検査や腱反射の検査すらしていない.「では何が痙性ですか?」この問いに対して,「だって,指曲がってきますよ」と答える.
(゜Д゜ )ハァ?

そして,「食事」
あのぅ・・・作業療法士でしょうが.
一人で食べていることは看護師さんの情報から十分に分かる.
作業療法士なら「どのように食べている」とか説明して下さい.
患者さんが食事に対して抱えている問題はあると思うけど,「自力摂取」の4文字で終わらせるつもりですか?

そして,「トイレ」
トイレ動作って,ズボンの上げ下げだけですか?
便意は?トイレまでの移動は?トイレ内での移動は?排泄中あるいは排泄中の座位姿勢は?トイレットペーパーの使用は?水を流す事が出来る?清潔にできる?・・・
いろいろと問題があるはずなのに,ズボンの上げ下げしかコメントしていない.

そして,そして,そして
作業療法士ならばADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)をもっと事細かくみないのか?
食事自力摂取とトイレ動作でズボンの上げ下げをする事にADLが集約されているとは思えないんだけども・・・

書類上の問題ではなくて,普段からそういう視点を持っていないためだと思う.
この作業療法士と患者さんを担当するにあたって,「日常生活はどうか?」と何度も言った筈なのに!
結果,トイレ動作におけるズボンの上げ下ろししかアプローチしていなかった.
もっと,この作業療法士の動向をジロジロ見ていればよかったが・・・臨床ではそういう事も難しい.

添書からは,作業療法士のコメントを削除させてもらった.
「書き直すか,このコメント自体削除するかしましょう」と持ちかけたのだが,そもそも,「していない」「みていない」ものについてはコメント出来る訳がない事に気がついた.なので削除.サヨウナラ

臨床の現状として,セラピスト(理学療法士,作業療法士,言語聴覚士)のアプローチは個室/密室状態であることが多い.
何をしているかチェックする事はなかなか難しい.
(今回のようにとんでもないこともある)
それに危機感を覚えて先輩や医師や看護師,その他のスタッフに助言を求めているのならばまだいいが・・・
まったく独自路線(しかも"誤路")をすすんでいるセラピストには手が焼ける.
患者さんに迷惑すらかける.

患者さんは転院に際してリハビリ課まで挨拶に来てくださった.

「先生のおかげでここまでよくなりました!」

と言ってくださった.
しかし,添書の事もあり,「最善を尽くしました」と思えなかった.
一人の理学療法士としては「最善を尽くした」つもりでも,リハビリテーションというチームアプローチをすすめる上では最善どころか不十分極まりないことを感じた.

もっと頑張るよ.

コメント

  1. 博愛精神 より:

    Unknown

    いつもカズさんの仕事に対する姿勢には頭がさがります~           自分ができてるかどうかは別にして(棚に置き)  詳細な評価ができてこそセラピストだと思うし、それがあるから適切な治療ができる。結局、へたなセラピストは「評価」をしてないんだと思います。ただなんとなく機能訓練してる。意味もわかろうとせず、そーゆーのにかぎってADLも把握してない。      昨日学生のレポートを添削しましたら、ゴールに「FIMの向上」と書いてきてました。笑(具体的に何をどのレベルまで向上させたいのか。。。?ハテナ)        でも、セラピストでもそういったレベルは多い。ガックシ レポートに書いてあるOTからの情報。。。「指先の感覚障害のため更衣ができないので巧ち動作訓練をしている」。。。しかし、こうち動作の検査、評価はまったくしていない。。。  オイオイ!! 学生にそんなこと教えたらあかんでしょ!と、いいたいけど仕方ない。とあきらめに入っています今日この頃です。

  2. kazz より:

    何(誰)のために仕事しているんだろうか?
    患者さんが何に困っているのかを把握してセラピーしなければ,ただの独りよがりの役立たずセラピーになると思う.

    よく言語聴覚士が誤嚥しそうな患者さんのカンファレンスで「楽しみ程度の食事(飲み込み)で」と言うけれど,

    これに,ある看護師さんが「患者さんは楽しみにしているんですか?」とツッコミを入れていた...

    ごもっとも!

  3. KAZZ BLOG より:

    いい添書

    以前にも書いたのだが,当院のリハビリを終了して他院(施設)へ患者さんが移られる場合に,
    ■添書
    というものを作成する.
    現在までのリハビリの経過や,現状などを書いて送るものだ.
    わがリハビリ科では,スタッフ室のパソコンを使って文書(.doc)が作成される事…

  4. たっくん より:

    笑える
    あんまり調子こくなよ。
    そのOTは一年目だとしても酷いが、あんたも酷い。内容を全く分かってないし、チーム医療がどういうものか分かってない。
    臨床で出来ないスタッフがいたら非難する前に育てるべき!
    周りの先輩がクズなだけだ。
    自分の過ちを後輩に押し付けるのは最低だな。

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