腰痛診療に対する情報を調べる機会が多くなっている。
長谷川淳史先生はもちろん、先生が「オヤビン」と敬称され慕われている菊地臣一先生(福島県立医科大学整形外科/理事長兼学長)の情報は非常に有用である。
なにせ、巷には、何の根拠も無い腰痛情報が溢れかえっている。
のみならず、おそらくそういった情報は、腰痛を招いたり、悪化させる可能性があるのだからたちが悪い。
本人たちは「よかれ」と思って情報拡散をしているのだろうけども、ことのほか腰痛に対しては、害をなすことの方が多いのではなかろうか。
腰痛は、ヘルニアや脊柱管狭窄などといった構造的な問題では起こらない。
検査をすればそういった診断名が付いてしまうのだが、腰痛を訴えない方たちも多く見られる変化である。ヘルニアや脊柱管狭窄が腰痛を引き起こす原因とは考えにくいのである。
むしろさまざまな診断名を付けて余計な不安を与えることこそが、腰痛を発症させ、増悪させる因子なのではないか?
背骨(概評から見られる棘突起)の並びや、姿勢、運動の仕方、筋力なども、腰痛との関連は強くない。
従来の腰痛教室は、運動の仕方や、姿勢の取り方などを指導するものであり、実はまったく効果を上げてはいない。
さて、そんななか、本日の産經新聞に腰痛に関する記事が掲載された。
※コチラ参照
菊地先生とおなじ、福島県立医科大学の白土修教授だ。
が・・・
「腰みがき」というものを提唱されているらしい。
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原因を特定できない慢性腰痛症を予防するため、「腰みがき」が提唱されている。
歯みがきの様に習慣として正しい姿勢の維持と運動をすることを指し、腰痛の治療や防止を図るのが目的。
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「腰みがき」という名称は、歯磨きと同じように、姿勢に気をつけて運動することを、生活習慣として実施することを意味している。
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とのこと。
記者は冒頭にこう紹介している。
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腰痛は、運動機能の衰えから歩行機能が低下する「ロコモーティブシンドローム(ロコモ)」の要因の一つと考えられ、ロコモ予防の手段としても腰みがきは有効だという。
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さて、
結局、腰痛に「筋力強化」「姿勢注意」という情報だ。
「腰みがき10カ条」
■背筋を伸ばす
■おなかに力を入れる(立ち姿勢)
■お尻をすぼめる(同)
■ひざを軽く曲げる
■いすには深く腰掛け、机に近づく
■ひざを曲げて寝る
■うつぶせで寝ない
■ひざを曲げて荷物を持ち上げる
■急に身体をひねらない
■毎日欠かさず運動を
・・・
さて、こういったアプローチが本当に腰痛の治療や防止になるのだろうか?
ロコモーティブシンドローム予防の手段として』有効なのであろうか?
僕は、このような「10カ条」は、腰痛に関しては、むしろ患者さんをがんじがらめにしているようにしか思えない。
この記事は、「効果があった。」という記事ではなくて、「提唱している」という記事である。
はっきり言えば、腰痛に対するアプローチはさまざまに開発されている。
どれも、効果はまちまちで、治った人もいるしそうでない人もいる。
だからこそ、「私はこれで治りました」とか「この○○で、あなたの腰痛も」などといった情報が溢れかえってしまっているのだろう。
大事なのは、本当に危険な腰痛(悪性腫瘍)などの有無を診断し、情報とともに安心を与えることが必要だと思う。
さて・・・
「腰みがき」続報やいかに?
コメント
警告
医療従事者ならちゃんと論文は目を通して意見を言った方が良いよ。
EBMに基づいた意見か確かめましょう。
re:警告
>警告さん
コメントありがとうございます。
調べてみたいと思います。
『EBMに基づいた意見』という表現がいまいち分かりませんが、元のネタとなった論文を探してみたいと思います。