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訪問後

理学療法/病院

島根県の離島、隠岐の島。

隠岐の島は、島前(どうぜん)と島後(どうご)に分かれるんだけども、先日僕が向かったのは、より田舎の島前の方。

そして、その島前でもさらに端の集落に行ってきたときのこと。

町の職員さんにつれられておばあさんの家にいくと、玄関で「ようこそ、ようこそ!」と笑顔で迎えてくれた。

おじいさんの診察(というか、相談や検査)のためにお伺いしたのだけども、おばあさんは玄関を上がり、おじいさんの前を素通りして、茶室(しかも二階)に案内してくれた。

おじいさんを素通りされるから、僕はてっきり二階に「真の患者さん」がおられるのだと思ったんだが・・・

その二階には
コタツにお茶セット。

しかも、妙に方付けられている(笑)。

おばあさんったら

「どーぞどーぞ!」

と笑顔。

町の職員さんが

「いやいや、今日はお客さんでお伺いしたんじゃないから!」

と説明すると

「お客さんより大切だわね!」

と、カラカラと笑っておられた。

何とも微笑ましく嬉しいお出迎えだ!

んで、町職員がそんなおばあさんを説得してから、やっとおじいさんのお話に到達することになった。

陽気なおばあさんとは裏腹に、おじいさんは病気の後遺症を持っておられて、日々の生活はおそらく大変だと思われる・・・

医師(僕はこの医師に同行していたんだけども)の診察や、相談を約1時間させていただき、最後は今後の提案などをお話ししながら、先ほどのお茶も戴いた。

薄暗い部屋に、歪んだ畳、部屋の隅に散らかる作業道具など、こういった田舎の家の空気は、懐かしい感じがした。
僕の子ども時代も、こんな風景だった。

お話を終え、訪問の相談診察を終えた。
おばあさんとおじいさんにお別れの挨拶をして、家を出る。

すると、どこまでもおばあさんが着いてこられる。

「ようこそ。ようこそ。」

と感謝の言葉を何度も戴いた。

「奥さんも元気でね!」

と、声をかけると

「いやだわ、涙が出る。」

と目をこすっておられた。

そして、腰を深く折り

『こんな所まではるばる来ていただいて、ほんとにありがとうございましたっ。』

と、ややなまったイントネーションながら標準語に近い言葉で話されるおばあさんが忘れられない。

本土、松江においても、患者さんたちは感謝の言葉を述べられる。
この若造である僕にも、深くお辞儀をされる。

僕は専門職としてやれる事がある。
と、そう信じつつ、リハビリの業務に携わっているつもりだ。

患者さんもそういった事に対する期待や感謝を述べられるのだろう。

マスコミがあおり立てようとも、医療は商業的なサービスにはなり得ないと思う。
アメリカの様に、そうであってはいけない。

支払い能力のある方を顧客として、医療サービス提供対象者とみなすこと。そんな事はあってはならない。
そして、顧客である患者は、要望に従わない医療者をサービスの悪い不良医療従事者とみなす。そんな事はあってはならない。

誤解を生じるかもしれないけども、医療とは「人助け」の一部だと思う。

医療における人間関係は
資本主義的な需給関係ではない。

僕も思う地域のシステムはそうではない。

日頃は訪問を行う機会は少ないし、あったとしても、退院前の評価としてお伺いするのみだ。
今回のように、生活の場が家のただなかにあるという方の訪問は皆無なのだ。

今回の隠岐の島訪問は非常に大きな刺激となった。

今回の経験を、日々の急性期の臨床に重ねつつ理学療法をいっていきたいと、そう思う。

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参考

KAZZ BLOG「隠岐」(2010年03月18日)
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