「あ!kazzさ~ん!」
外科病棟の看護師さんに呼び止められた。
この看護師さんはもともとリハビリ病棟にいたのだけど、移動で数年前に外科病棟に移られた。
僕よりも4つくらい若手の看護師さんだ。
呼び止めた内容は、とある患者さんの訃報についてだった。
にもかかわらず、彼女はなぜだか笑顔。
亡くなられた患者さんは生活の全てに介助が必要な方で、いわゆる「寝たきり」の方だった。
この患者さんが前回入院されたのは、もう何年も前…
彼女の新卒時代だそうだ。
「あの患者さんが私の原点なんです」
と彼女は言う。
新卒で、右も左も分からないときに、担当させてもらい、多くを学ばせてもらった患者さんなのだそう。
寝たきりの患者さんをどうにか車椅子に座ってもらおうと思っても、手足がつっぱってうまくいかなかったのを、それでも頑張ったこと・・・
そして、その時のリハビリの担当が、僕だったこと・・・
そんな思い出を彼女は嬉しそうに話す。
この度、この患者さんが具合を悪くされてウチの病院に来られた時、本当は病気の具合から別の病棟に入る予定だったとのこと。
けども、ベッドが空いてないかなにかの理由で、彼女のいる外科病棟に入院されたらしい。
こんなかたちだけど、彼女が会うことがこの患者さんに出来たのは、ほんとに偶然みたいなもんだ。
しかも、この春の時期に・・・
こうやって自分の原点を見つめ直すことが出来るなんて素晴らしい。
偶然なんだけど、偶然じゃないようなご縁に彼女は喜びを感じたんだと思う。
そして、僕を呼び止めた。
患者さんは亡くなられたのだけど、確かに彼女に中に生きている気がした。
彼女の笑顔から、
死は
悲しみだけではないのがわかった。
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