後輩君の担当している患者さんを、彼の休みの日に1日だけ代理で担当させてもらうことがあった。
転院を間近にしてのことだった。
僕のアプローチの最中、そしてその後も、患者さんであるおじいさんと、奥さんは深く頭を下げて、涙まで流して喜んでくれた。
涙の理由は、『歩く練習ができた』ということ。
『この病院では、もはや無理だと思っていた』
『けども、歩くことができた。』
まだ、手伝いが必要な状態ではあったけども、おじいさんは、確かに歩けた。
患者さんが喜ばれるのは嬉しいことだ。
けども、
複雑なのは、後輩君がいままでしたことは何だったかということ。
彼が積み上げたものをガラリと崩したようで、申し訳ない気もした・・・
いや・・・、こんなにも患者さんが喜んでくれたのだから、まぁ、いいか。
・・・などと思いながらも、翌日の彼の出勤となった。
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事情を話したら、彼は、その患者さんのアプローチを一緒に見てもらいたい、と申し出てきた。
断る理由も無かったし、彼がどのようにアプローチをしているかを見てみたい気もしていた。
僕はなるべく口は出さずに、彼のアプローチを、奥さんとともに見ることにした。
ほどなく、奥さんが口を挟む。
『ほら、昨日はもっと上手に歩けたでしょう!』
『そうじゃないでしょう!すぐに忘れてしまうんだから・・・』
と、すこしおじいさんを責めているようでもある。
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事後、フィードバックの時間。
つまり、後輩君とそのおじいさんのアプローチについて話し合う時間を設けた。
後輩君と、彼の技術差・・・
なんて、野暮なことは話をしない。
しても、意味が無い。
それよりも、
『ほら、昨日はもっと上手に歩けたでしょう!』
と、奥さんがいわれたことについて、話をした。
後輩君はミスを犯していたと思う。
それは、
おじいさんに「正当」を与えようと努力をしていたこと。
つまり、
「正しいやり方」を、一生懸命に言語化しておじいさんに伝えていた。
それを聞いていた奥さんも、その「正しいやり方」を行えていないおじいさんをみて、ヤキモキしていたのだ。
では、その昨日、僕がアプローチをしていた時はどうか?
言語化しなかったのだ。
とはいえど、黙々とアプローチをしてたのではない。
動作については詳しく話さないようにしていた。
たとえば、「杖から出しましょう。その後、左足」とか「違います」
などといった語は、僕はアプローチの中においては、なるべく使わないように心がけている。
じれったいかもしれないけども、僕が求める動作と違うことを患者さんが行われた場合には、「違う」と指摘せずに、「そうですね。次は、もう一回してみましょう」という指示を出すようにしている。その動作の指示内容も、詳しくはしないようにする。エラーを感じたら、何気なく手を添えて動作を修正することも可能だ。
なので、見ている奥さんにも、エラーは殆ど伝わらない。
僕のアプローチ中は、だいたいうまくいっていると思われていたのだと思う。
それに引き換え、後輩君のアプローチは、「正しいこと」を伝えようとするので、「エラー」をどんどん指摘する。
奥さんにしてみたら、
「あら、なんで、今日はできないのかしら」
と思われるわけだ。
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僕が思うに、「違う」と伝えるべき時は、なるべく少ない方がいいと思う。
それでもって、たとえば、危険なときであれば、それを伝えてもいいかもしれないと思っている。
患者さんは、ある日突然に、半身の自由がきかなくなっている。
そんななかで、日常生活においては禁止事項がつきまとう。
一人で座ろうとしてはいけません。
歩けません。
車椅子でどこか自由に出てはいけません。
食事の時はこうしましょう、ああしましょう
などなど
・・・ダメなことが多すぎる。
そんでもって、「リハビリの時間」と称して、「あれは違う」「それは間違っている」と指摘されまくったら、辛いだろう。
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リハビリってのは
『何かに挑戦して、乗り越えていける。』
という楽しい面ももつと思う。
『よりよく生きるため』のアプローチだと思う。
それを最大限に引き出せるように関わりたい。
後輩君にアドバイスしておいた。
ワンセッションの終了は、
なるべく
『何かを達成した』という気持ちになれるようにすること。
そして、何かができなかった場合でも、患者さんに挫折感を味合わせるのではなくて、
『次はこれを乗り越えましょうね!』と目標を提示して終えること。
決して
『今日も、できなかった。』『やっぱり難しい』『ダメだった』というような印象でセションを閉じないように。
参考
KAZZ BLOG「禁止」(2010年04月21日)
KAZZ BLOG「リハビリ」関連の記事
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コメント
ありがとうございます
大変勉強になりました。
re:ありがとうございます
>長谷川淳史さん
いつも訪問&コメントありがとうございます。
参考になりましたでしょうか(^_^;)アセ
こんな感じで臨床をすすめているつもりです!
時々拝読
時々拝読してます。
とても勉強になりました。
相手のプライドに傷をつけず、ポジティブに挑戦するにはそうですよね。
親という漢字を思い出しました。
re:時々拝読
>こんばんはさん
いらっしゃいませ。
時々いらしてくれているとのこと、嬉しく思います。
挫折感ではなくて、達成感を味わえるように促すことができたらなぁ・・・と思いつつ臨床にいます。
また、いらして下さいね!