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MSW

理学療法/病院

病院の都合

で、したくもない転院をすることになったおじいさんのことを思い出した。

赤十字の基本理念にある
「苦しんでいる人を救いたいという思い」

この文章が酷く胸に突き刺さる。

僕は、リハビリのスタッフとして、おじいさんの「苦しみ」を理解したいと思ったし、そこを立脚点に専門である理学療法のアプローチを展開しているつもりだった。

『あるきたい』

すでに、多くの歳を重ね、身体の臓器も弱り、つまらないベッドの生活からの開放は、「歩く」という思いに託されていた。

細い足でやっとこさ身体を支えて、それでも前に推進させる力をふり出せるようになった。

『もうすこしで歩ける』

そんなときに、
医療社会事業部から、ソーシャルワークと称して、おじいさんの転院の話を進めにきたスタッフがいる。

おじいさんの歩行を考えると、日常生活上は役に立たないかもしれないけども、自分で「歩く」ことはもう少しで達成できる、筈。

だからどうか、せめて、歩いてから転院の話を進めてくれないか・・・

転院先にはリハビリのスタッフはいないし、看護スタッフは居られても、そういった環境におかれていないスタッフだから、多くは望めない。

おじいさんの命も尽きるまでにゆとりがあるわけではないのかも知れないが、それならばなおさら人生の終末に「歩いたんだ」という喜びを得て、それからの転院でもよいだろう?
転院しなければ死ぬという状況でもあるまいに。

たとえば、2週間。
2週間入院期間がのびたとして、どこの誰が不利益を被るというのだろうか?

その間に歩けたらば、それで万々歳ではないか?
僕等の医療を受けてよかったと思ってもらえるのではないだろうか?

ソーシャルワーカーはよく働いてくれるし、無理も聞いてくれる。
だが、全員が全員ではないし、場合にもよるようだ。

そして、彼らのそのわずかな行動の違いが、とんでもない結果を招く場合がある。
とんでもなく良い場合もあるし、とんでもなく悪い場合もある。
・・・今回は残念ながら後者だったんだ。

「病院が困る」とか「先方のドクターが不満を言う」とか、そんなもんはどうだっていい。

「患者さんがどうか」を一番に考えてソーシャルワークをしてもらいたい。

さらに、もっと突っ込んで言うならば、「病院の」とか「先方の」という言葉には、もしかしたら、ソーシャルワーカー自身の保身という目的さえも内包しているんじゃないのかい?
と言いたくなるくらいだ。

チーム内でいざこざしていてもいけないと思うのだが、そこまで世界のチームワークは成熟していない。
これは、現場スタッフならば充分に理解できることだと思う。

医療スタッフは患者さんのために動くべきだ。
そうでなければ、それは医療ではない。

僕はこの件に関してソーシャルワーカーに申し出たことがある。

『一度、おじいさんが歩く練習をするところを見てみてもらいたい。そうすれば、絶対に””なんとか歩かせてあげたい””って気持になるから。』

見てみればわかる。
ゴール達成までもう少しの所を手足をふるわせて、輝いているおじいさんを見たら、なんとかしたくなる筈だ。
間違いない!

んだが、このソーシャルワーカはあっさりと断りやがった。

自分が行くと、「入院の延期をせがまれるだろうから」という理由だった。
しかも、そんな理由で、しばらく前から患者さんの前に姿を現さないようにしているということだ。

・・・

いったい誰を見て仕事をしているのか?

患者さん不在のソーシャルワークなんてありっこない。
喜びも苦しみも共にするような気持で・・・そんな気持でソーシャルワークをしてもらいたいのだが、そんなセンチになってはプロとしてダメなんだということなんだろうか?

とにかく、おじいさんの前には姿をあらわさずに、裏でスタッフ同士が口裏を合わせて、””おじいさんのための””転院話を進める。

そんなのアリか?

僕が何を言っても、このソーシャルワーカーには通じなかった。

理学療法士としての意見だ。

これを全体の視野からみたらどうなるか?
おじいさんの意見を直に汲んだアプローチが偏った考えか?

身体状況を加味して延期可能か?
そのことを主治医や先方のスタッフに話をしてみる、いやむしろ説得することは出来なかったのだろうか?

「自分からはチョット言えません」
とか切り返してくるソーシャルワーカー殿はもはやなんにも役に立たなかった。

だから、自分で動いて、医師に訴えて行くしかなかった。

おじいさんが、頑張って歩く努力を精一杯しているんだから、僕は自分で出来ることを精一杯やるんだと・・・そういった思いで主治医にも訴えた。

結果どうだったか・・・

やはりダメだったんだ。

----------------

このソーシャルワーカーにも誠心誠意話をしたし、申し訳ないことにかなりの文句も言わせてもらった。

それでも、やはり転院は「予定通り」行われてしまった。

最期の最期までおじいさんは強く握手を求めてくれた。

そうやって、おじいさんは転院した。
いや、転院させられた。

そして、おじいさんの転院後しばらくして、先方の情報を得たこのソーシャルワーカーが僕になんと言ったと思う?

『やっぱり元気がなくなっているみたいですよ』

もはやベッド上の生活しか許されていないんだと思う。

「・・・みたいですよ」なんて
そんな情報はいらないんだよ。

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参考

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コメント

  1. 某MSW より:

    ソーシャルワークとは?
    初めて投稿させて頂きます。貴方のブログを拝読し、何とも言えない気持ちになりました。私も某病院でMSWの末端で働いております。貴方のおっしゃる患者不在のソーシャルワークという言葉を目にし、自分の実践を振り返ると、多々同じような場面があったことに気付き恥ずかしい限りです。おそらくそのMSWにもジレンマがあったとは思いますが、患者抜きにしてソーシャルワークは出来ません。あってはならないことだと思うし、それであればソーシャルワーカーは不要ですよね。利用者本位とは言いますが、まだまだ家族、病院本位で事が進んでいる現状を何とか打破しなければと思うMSWでした。ありがとうございました。

  2. 某Dr より:

    他の面からみてみよう
    なぜその患者さんはそこまで廃用が進んでしまったんだろう。リハの時間以外になんらかのアプローチをすればそこまで筋力が落ちなかったかもしれないし、本人の望む退院先も選べたかもしれない。
    次の転院先で少しでもマシな生活を可能にするために主治医や受け持ちナースやMSWと一緒に何かできたことはなかったでしょうか。
    一人の患者さんの退院が延びることで、一台の救急車の受け入れが不能となり、命に関わる病気の人が入院できなくなるとすればそれも大きな問題となります。急性期病院としての機能を維持するためにはそのMSWさんの判断の方がBetterということもあるかもしれません。
    まあ目の前の患者さんのことをちゃんとできない奴にそんな病院全体のことを考える能力があるとは思わないけどね。

  3. カツ より:

    Unknown
    某Drさんの
    >一人の患者さんの退院が延びることで~

    同感です。KAZZさんの熱意には申し訳ないですが…地方の限りある医療資源のことを考えると。
    しかし、後方病院(失礼な言葉かも?)、維持期、慢性期の病院が島根には不足していて、KAZZさんのようなPTを抱えている急性期以外の病院は少ないです。
    熊本モデル…理想ですね。

  4. kazz より:

    RES
    みなさま、冗長な文章にもかかわらず読んでいただいてありがとうございます。

    >某MSWさん
    コチラこそコメントありがとうございました。
    それぞれの専門家がそれぞれの立場で悩みを持つと思いますが、それでも、MSWはいっそう精神的に辛いと思います。
    あちからこう言われ、こっちからこう言われ・・・そして、仕事量はべらぼうに多く・・・なんてことも日常茶飯事だと思います。
    どうか、つぶれずに頑張ってください。

    >某Drさん
    御示唆ありがとうございます。
    アプローチの点から言えば、耳が痛いです(^_^;)アセ
    ただ、この方に関して言えば、「病院で作られた廃用」ではなくて、むしろ、看護師さんも離床に励んでくれた方でした。しかし、いまいち腎機能が・・・モゴモゴ(←自制)。何にせよ、某Drさんの言われる通り、「そこに至るまでに」解決できたことやすべきことは数々あったかもしれません。残念ながら、なんとも悔やまれることです。

    あと、「急性期病院としての機能・・・云々」について・・・、たぶんですね、そうは言いつつも、入院を延ばしちゃう某Drに4000点(笑)!

    >カツさん
    コメントありがとうございます。
    僕も、某Drさんの言われることはよくわかります。
    で、第三者がこういったことを言っているのを僕が聞いたら、「病院の運営や医療資源の問題もあるしさ!」とか言っていたかもしれません(爆)。
    ただ、僕はこのおじいさんを直に見てしまっているわけです。
    そうすると、どうも、社会システムでは納得することができないんですよね・・・。

  5. 某Dr より:

    Unknown
    あくまでこの間のは冷静になってね。という「大人の」コメント。

    >あと、「急性期病院としての機能・・・云々」について・・・、たぶんですね、そうは言いつつも、入院を延ばしちゃう某Drに4000点(笑)!
    僕が延ばすかどうかについてはですね・・・
    なんのために亜急性のベッドがあるのか!!とか文句言ってリハビリが出来る環境をなんとかつくるでしょうかね。自分の受け持ち患者を大事にしないと最後には自分に跳ね返ってきます。
    患者のリハビリの現場を見ないMSWにはレッドカードをだすでしょう。「おまえはどっか他の職業につけ!!」とかわめいているかも・・・
    という大人げないコメントもあげておきます。(^_^;;;

  6. むこさん より:

    Unknown
    こんばんわ。
    私は医療関係者ではありませんが、福祉の現場でソーシャルワーカーとケアワーカーを両方をさせていただいております。その両方の立場で板挟みになることもいっぱいあります。苦悩し出した結論が本当によかったのか、その後私を苦しめます。
    ただ、自分が支援される立場であったらと考えると「わがまま」と言われるかもしれませんが、納得できるものを選択したいと思います。そして、その結論を出すまでのプロセスを本当に大切にしてほしい、そう思います。
    ちょっと部外者がピンボケなことをいってすみませんでした。

  7. kazz より:

    >某Drさん
    「大人のコメント」と「大人げないコメント」ありがとうございます(笑)!

    先生と仕事していた頃が懐かしいですよ!

    またいろいろ頼らせていただきますが(病棟ともども)、よろしくお願い致します!
    m(__)m

  8. kazz より:

    >むこさんさん
    コメントありがとうございます。

    プロセスって大事ですよね。
    ピンボケではなく、良いお話をありがとうございます!

    精神的に大変かと思いますが、自分もいたわりつつ、お仕事に励んでくださいね!

  9. Unknown より:

    Unknown
    100人の患者さんが1点ずつもらうのと、一人が100点もらって、残りの99人が0点なの、どっちがいい?

    どっちも嫌だけど、どっちもどっちだけど。
    100点もらった一人とだけと付き合っていける人はいいけどね。

  10. ぱる より:

    いますね!
    こういうMSWは結構いますね。
    ただの「追い出し屋」的な、医者の手足で満足している低俗な医療ソーシャルワーカーが‥。
    この形に徹してくれれば転院事務員と扱えば良いので、ある意味スッキリするのだが、口が達者でそうもいかない訳で‥。

    医療ソーシャルワーカーは無資格の人も沢山おりますが、社会福祉士を有していても、そもそも非医療職なので仕方がないが、「病態生理が全く理解出来ていない」事が致命的。

    医療をする上で、期待しないことです。

  11. kazz より:

    >Unknown (Unknown)
    返事が遅れました!
    3年越しの返事で申し訳ありません。

    そうですね。
    どちらかではなく、みんなから100点をもらいたいという気持ちを持ち続けたいと思います!
    はじめから、切り離すような考えはしたくないですね。

  12. kazz より:

    >ぱるさん
    コメントありがとうございます。
    おかげさまで、一つ前の3年前のコメントに返事ができました!

    どの分野でも、期待できない人はいるかもしれませんね。
    その人なりのポリシーや努力で仕事をしているかもしれませんが、患者さんの方を向いていてもらいたいものです。
    非医療職の方に病態生理を説明することは難しいかもしれませんが、患者さんも同様なので、噛み砕いて理解してもらえるように努力が必要かもしれませんね・・・というこの僕も病態生理について、あやしい限りなのですが・・・

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