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クツとツエ

おばあさんは、穏やかで快活な方。

リハビリの時間、僕のやってくるのを楽しみに待っておられたらしい。

孫のような先生ということだ。

重い病に冒されてしまっていたものの、家に帰ることを目標に運動をがんばり、やっと歩けるようになってきた。

また悪い症状が出る前に、家に帰って、外来で治療を続けることを望まれた。

家に帰るにあたって、いろんな支障があるから、生活を考慮したリハビリを短時間で行う必要があった。

僕だけでは無理なので、作業療法も追加してもらった。

もともと、クツやツエを持っておられたのだけども、この際、新しいのを買うことにされていた。

いろいろ悩んで、どれを買うか決めた。

「先生だったらどれにする?」

って聞かれたので、正直に

「安いから、コレ!」って答えた。

笑いながらも、そのとおりに選ばれた。

今度、そのクツとツエを買いにいくんだ。

時には検査結果の悪い日だってあった。

シュンとしているおばあさんに

「顔色いいから大丈夫だよ!」

なんて励ますと、笑顔を出してくれた。

それで、今度、新しいクツとツエを買いに、一緒に売店に行こうということになった。

車椅子は僕が押すから、売店まで行こう。

そう約束していた。

その翌日

おばあさんは亡くなられた。

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