村上春樹が訳した「The Catcher in the Rye」を買った。
■キャッチャー・イン・ザ・ライ
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先日、同じく「The Catcher in the Rye」の訳本
■ライ麦畑でつかまえて
ライ麦畑でつかまえて (白水Uブックス)J.D.サリンジャー白水社このアイテムの詳細を見る |
を読んだ。
コチラは野崎孝さんが昔に訳したもので、多くの人に愛されてきた。
原作は
J.D.サリンジャー
「新作を発表しないことで、その存在が誇張されてしまう作家」だ。
(※サリンジャーは65年以降新作を発表していない)
これからは、少しネタバレ的になるので、それに不満がある人は、目と耳を閉じて、口を噤(つぐ)んでいてもらいたい。
「The Catcher in the Rye」は、高校を辞めさせられた16歳、ホールデンの3日間の話だ。
このホールデンが考えたこと、感じたことがずっと話し言葉で綴ってある。
ホールデンの話を聞くと(読むと)、彼は屈折している・・・ように感じるけど、実はどこまでも純粋だ。
それ故に、
彼の思うことは、突拍子も無く、世の中にも受け入れられない。
多くの人が、大人になるに従って捨てていった「自由」を彼は失っていない。
世の中のみんなが、拍手喝采することでも、彼は「ヘドが出る」と感じるし、逆に、世の中の人がどうでもいいようなことに感心したり「まいったね」と賞賛したりする。
そんな彼だから、人を怒らすこともしばしば。
喧嘩も絶えないし、高校だって辞めさせられてしまうんだから・・・
そして、10歳の妹にも問いつめられてしまう。
「兄さんは世の中に起こることがなにもかもいやなんでしょ」
・・・そんなことはない。ただ、世の中の多くと考えが合わないだけで、彼ホールデンにだって大切なものはたくさんある。
・・・それが世の中の多くと合わないだけだ。
反論できない彼は、自分が何になりたいかを妹に伝える。
「ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ」
ライ麦畑のなかで、何千て子供達が夢中で遊んでいる。
子供達は、見通しの悪いライ麦畑の中に危ない崖があることも知らずに・・・無我夢中で走っている。
その子供達が落ちないように、崖のふちでつかまえる役になりたい・・・
・・・ということだ。
「ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたい」
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(原文訳:野崎孝)
『とにかくね、僕にはね、広いライ麦畑かなんかがあってさ、
そこで小さな子供達が、みんなでゲームをしているところが目に見えるんだよ。
何千っていう子供たちがいるんだ。そしてあたりには誰もいない。
誰もって大人はだよ。僕のほかにはね。
で、僕はあぶない崖のふちに立っているんだ。
僕の仕事はね、誰でも崖から落ちそうになったら、
その子をつかまえることなんだ。
ライ麦畑のつかまえ役、そういったものに僕はなりたいんだよ。』
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「ライ(Rye)」は「ライ麦畑」のことだけど、(日本では)同音で「嘘(Lie)」というのもある。
ホールデンのなりたいものは・・・
純粋な子供達が、インチキな大人達の世界の中を無我夢中で走ってツマハジキにされないように、見守り助けるつかまえ役。
ホールデンは世の中の価値観との不一致を抱えて「目と耳を塞ぎ、口を噤んだもののようになろうか」と思った。
・・・つまり、なにがあっても声をあげずに見て見ぬ振りをする。あるいは世の中からはなれた存在になろうかと思った。
けども
純粋になりたいものは「ライ麦畑のつかまえ役」だった。
これは、自分の感覚とはズレた社会に生きるホールデンの希望でもあるのだと思う。
自分が崖から落ちそうになっているから・・・あるいは落ちてしまっているのだから。
彼は、ふと学校にある何でもない落書きに苦悩する。
落書きは
階段を上っていく途中、壁に書かれた
『Fuck you』
純粋な子供達がこの言葉に犯されてしまわないように落書きを消すのだけど
同時に
世界中の落書「Fuck you」を消すことは出来ないし、その勇気のない自分にも気がつく・・・
・・・
ネタバレ的・・・とかいたが、肝心なことは書いてない。
これを書くと、何が本当か分からなくなってしまうからだ。
この本が存在することで、ホールデンは「ライ麦畑のつかまえ役」としての役割を果たせるのだと思う。
一人称で語りかけるホールデンの話を聞いたら、誰だってそう思うと、思う。
コメント
Unknown
古いコメに投稿して申し訳ないですが、これ読みました。
いい話でしたねー。
余談ですが、文章中にFuckがあったせいでこの本、
廃刊処分になったんですよー
>Unknown (joe)
いらっしゃいませ!
ほんとに気に入っています!
人生の中のお気に入り一冊に挙ると思います!
Fuckのせい・・・時代の背景もあったんでしょうね。
また、いらしてください!
坊ちゃん
先日、久々に夏目漱石の「坊ちゃん」を読んだ。
坊っちゃん (新潮文庫)夏目 漱石新潮社このアイテムの詳細を見る
なんと言っても、この小説の良さは「痛快さ」だと思う!
なんど読んでもスカッとする!
そして、坊ちゃんの独特の正義感!
そして、それを補えないでい…