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ハナ

「ハナ・・・アゲェワ」

腰が大きく曲がったせいで、かなり短い杖を使用しているおばあさん。
今日は担当の理学療法士が休みなので、僕が臨時担当

僕との歩行練習を終えて、ベッドにあがるなりこう言われたのだ。

「ハナ・・・アゲェワ」

よく、聞き取れないので

「え?」

って聞き直した。

「ハナ・・・アゲェ」

おばあさんが指差したのはベッド前のオーバーテーブルに置かれてあった箱・・・

その中には、折り紙があった。
手つかずのものと、
金色で・・・四角く折られた折り紙があった。

『コレを取ってって意味かなぁ・・・?』

と思い、その四角い折り紙を差し出したら・・・

「コレハ、ツクリカケ・・・」

おばあさんは、今度は、違う箱を指差した。

さっきとは全く違うところ。
ベッドの下の方だ・・・

その箱の中には、さっきとは様子の違う折り紙が山ほど折られていた。

でも、すぐにわかった!

「花」だ!

おばあさんは

「花をあげるわ」

って言っていたんだ!

同室の患者さんがクスクスと笑っておられた。

どうやら、このおばあさんは来る人来る人に、「ハナ、アゲェ」って、こう言ってハナ(折り紙でつくったもの)をあげていたんだ!

お客さんにあげるために折られたハナ。
貰い手がなく、持ち主不在のままベッドの下にどんどんたまっていくハナ。

僕は、おばあさんをとても愛おしく思った・・・

だから

おばあさんに、僕に似合うハナを選んでもらった

「アカ・・・ミッツ」

そういって、おばあさんが箱から取り出したのは、赤・オレンジ・茶の3色のハナだった!

どこかで習ったのか、あるいは昔から知っていたのか、割り箸で花びらがクルンと巻く細工が施されている・・・

僕は、そのハナを3つ束ねて、デスク前のボードに飾っておいた。

「ハナ・・・アゲェワ」

って声が、聞こえてきそう!

ありがとーねっおばあさん!

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