スポンサーリンク

ミトコンドリア・リハビリテーション

理学療法/病院

権威ある医学雑誌NEJM(New England Journal of Medicine)に、中枢神経の再生についての記事が掲載された。

『Mitochondrial Mobility and Neuronal Recovery 』
(N ENGL MED 375;13 NEJM .ORG SEPTEMBER 29, 2016)

古い時代(といっても、ほんの前世紀)では、神経細胞の再生は末梢神経では認められるものの、中枢神経では認められない…といった具合に語られていたのだけど、もはや、中枢神経においても再生するのは当たり前で、それがどのようになされているのかという研究の段階になっている。

パレット上の神経細胞の再生が認められたのみではなく、機能的(つまり、その再生された神経が役割を持って生体に関与すること)にも目が向けられている。

というか、機能的な回復が認められたのが初めで、その後に(やはり)神経細胞の再生が確認されたと言うべきかもしれない。

中枢神経系が侵された患者においても機能的な回復が認めれることに焦点をあて、そのための介入方法を模索したBobath(ボバース)の活動は、今でも魅力的だ。

今回の論文では、その神経細胞の再生における中枢神経のミトコンドリアの動きについてのもの。

神経(軸索)の再生には、エネルギーを供給するミトコンドリアの活動が欠かせない。

そもそも、神経細胞の自己回復能力は乏しく、損傷された場合の神経を取り巻く環境も回復を抑制する状況であるため、神経細胞にとっては不利な状況と言える。

ミトコンドリアは、教科書で見ると単なる(静的な)細胞なのだけど、実は目まぐるしく活動している。
それが、この論文タイトルにあるMobility に表されている。
日本語訳のタイトルでは『走行』とされている点が面白い。

このミトコンドリアが動くためのタンパクが
・キネシン Kinesin
・ダイニン Dynein

で、つなぎとめるタンパクが
・シンタフィリン Syntaphilin

これらの働きによって、ミトコンドリアが目的個所にエネルギー(ATP)を届けることになる。

Zhou(周)らは、ミトコンドリアをつなぎとめるシンタフィリンを遺伝子ノックアウトさせ、ミトコンドリアがより動き回れるようにし、その結果、軸索がより回復することを確認した。

かくも神経細胞の回復にはミトコンドリアの動きによるエネルギー供給が必要なのだ。

この論文にはrehabilitation(リハビリテーション)という語は出てこない。

けれども、論文の締めくくりにあるその文がリハビリテーションの重要性を語っているように感じる。

曰く
"And there is still a lot of more that we need to know, such as whether these regenerating axons would also reconnect with their targets to the extent and in the manner required for functional recovery. "

神経細胞が回復により軸索を標的に伸ばすのは、機能的回復の要請に応じる形でなされるわけだ。

そこの部分は、ミトコンドリアではなく、われわれセラピストが担うのだと思う。

ミトコンドリアを届けるセラピーをしよう(笑)!

コメント

タイトルとURLをコピーしました