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百合の香

ふたりで歩いた。

手をつないで、いろいろな花をみて

ただそれだけの、夜を過ごして

強い百合の香りに包まれて、それだけに幸せを感じていた。

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百合は
ユリ科に分類される単子葉植物の総称。
世界中に約3700種が分布。
主に草本で、球茎をもつ。
花被は内外3枚ずつあり、いわゆる萼(がく)はない。
幾つかの亜科に分けられ、ユリ亜科にはユリ属のほかカタクリ•チューリップ•アマナなどの属も含まれる。

花言葉は
 威厳
 純潔、無垢
 貴重、純愛
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強い香りをもつ百合。
この香りを嗅ぐと、その中に、身を放り出したくなる。

きまって、夏目漱石「それから」を思い出す。

「それから」は、百合の花の香りとセットになった小説だ。

百合の花の強い香りがもつ
独特の官能、けだるさ、心地よさ・・・
小説の中にそういったものを感じる。

逆に、百合の花の強い香りを嗅ぐと、「それから」が思い出される。

悲しい恋の物語。

「代助は、百合の花を眺めながら、部屋をおおう強い香の中に、残りなく自己を放擲した。彼はこの嗅覚の刺激のうちに、三千代の過去を文明に認めた。その過去には離すべからざる、わが昔の影が煙のごとく這い纏わっていた。彼はしばらくして
「今日初めて自然の昔に帰るんだ」と胸の中で云った。こう云い得た時、彼は年頃にない安慰を総身に覚えた。なぜもっと早く帰ることができなかったのかと思った。初めからなぜ自然に抵抗したのかと思った。彼は雨の中に、百合の中に、再現の昔の中に、純一無雑に平和な生命を見出した。その生命の裏にも表にも、欲得はなかった。利害はなかった。自己を圧迫する道徳はなかった。雲のような自由と、水のごとき自然とがあった。そうしてすべてが幸(プリス)であった。だからすべてが美しかった。」

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