PTジャーナル44巻 第2号は、「脳卒中のゴール設定」という特集で、脳卒中リハに関わる方ならば、誰でも目を留めるであろうものだ。
理学療法ジャーナル 2010年 02月号 [雑誌]医学書院このアイテムの詳細を見る |
定期的にこういった特集があるな。
さて
重箱の角的に気になったことがある。
気になってしまうと、とことん気になってしまう性格だ。
なので、別に場がしてしまえばいい事かもしれないし、・・・そうでないかもしれない。
倉敷中央病院の「脳卒中の障害学に基づくリハビリテーション科専門医のゴール設定」と題された論文。
論文自体は素晴らしいのだが、以下の切り出しが気になった。
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リハビリテーション医療では、「患者は治療後に生活者として、再び地域に帰り生活機能(住み慣れた場所で、健康に家庭・社会生活が自立している)を継続してゆく」という視点が重要であり、脳卒中のリハゴールは「生活機能を継続してゆく」ことに尽きる。
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一見、正論なのだけども「地域」という語の使い方が、どうもしっくりこない。
「再び地域に帰り」という文句があるのだが、では、患者はどこにいたのだろうか?
「再び地域に帰る」というのだから、「地域」というシステムの外にいたということになる。
つまり、病院(急性期~回復期や施設(回復期~維持期)は、「地域」では無いのだろうか?
あるいは、生活する場を「狭義の地域」と定義着けているのだろうか・・・
いやいや、生きている限りにおいては、人はどこにいても生活者と言える・・・
患者は、病院にいようが、施設にいようが、在宅にいようが、『「地域」にいる』というふうに、僕はそうとらえている。
たしかに、病院や施設などは特殊な空間である事に変わりが無い。
では、地域との境界は?
建物か?場所か?
だとしたら、類似したサービスを利用している場合はどうか?
外来や通所サービスや訪問サービスの利用は?
この論文や、病院を否定したいのではない。
それに、ここで使用された「地域に帰る」という語句を「間違いだ」と言いたいわけではない。
僕が「地域」というものをどう考えていて、それがどうもここで使用されているのとはかなり違うという事を感じただけだ。
僕は「地域」の捉え方としても、病院や施設などは「地域というシステムの外」として考えることがどうしてもできない。
この論文で、たまたま引っかかっただけなのだけども、良い考える機会になった。
地域とは何か?
地域医療とは何か?
地域リハビリテーションとは何か?
今の職場に入った直後の院内の集会で、職員(看護師)の発言に苦言を呈した前院長のことを忘れもしない。
病院の報告(何の報告か忘れてしまったが)が終わった後に、年配の看護師が手を挙げて発言に立った。
これまた、内容は覚えていないが
『~の点について、病院側はどうお考えですか?』
という質問だった。
これに対して、前病院長は返答の頭に付け加えられたことがある。
『「病院側」と言われますが、「病院側」とは何ですか?誰のことですか?
一部の人ですか?
あなた方も病院のスタッフです。
まるで、職員が病院の一部ではないかのように言われますが、あなた方も「病院」なのですから、・・・』
非常に納得がいった。
「地域」にしても「病院側」にしても、言葉の定義、あるいは捉え方の講義・狭義の違いかもしれない。
大枠としてサラリと意味が通じてしまう。
もしかしたら、「地域」や「病院側」という語も「Stand Alone Complex」なのかもしれない。
オリジナルというものは存在せずに、「それ自体ではないけどもそれらしきものの複合」が、結果として「地域」や「病院側」と言われるもののように感じているだけなのではないか。
だとしたら、「地域」という概念も曖昧に有機的に変化し、そこにアプローチを加えようとする僕達も曖昧に有機的に行動する。
いや、むしろ、アプローチする側の人間達が結果的に「地域」を定義付けてしまい、結果として消滅する媒介者となる。
つまりそれは消滅することによって社会システムの動態を規定する媒体であり、最終的にはシステムの内側にも外側にもその存在の痕跡を留めない。
フレデリック・ジェイムソン
イエス。でもノー。後者は大澤真幸。
言葉では知っていても、実際に目の当たりするまでは信じられなかった。オリジナルの不在がオリジナル無きコピーを作り出してしまうなんてね。
あなただったら、あの現象を何て名付けますか?
STAND ALONE COMPLEX
・・・
あれっ!
Σ(  ̄□ ̄;)
変な世界に入ったな(笑)。
定義を探すその行動自体が、定義の拡大あるいは縮小を生み、またあらたな定義付けへと行動させる。
ん
深追いせずに、さらりと流して読んでしまおうか。
- or should I ?
コメント
「地域」あるいは「社会」
きわめてまっとうな疑問です。
高齢者、ことに障害者の「社会参加」にしても同様。施設や病院にいても、「社会」の外にいるわけではありません。ましてや、「地域」の外にいるわけでもありません。
「地域」と施設や病院とを対立させてモノをいう人は、根本的なところで間違っています。
re:「地域」あるいは「社会」
>風紋さん
コメントありがとうございます。
今回の件で、「地域」ということを見つめ直すよい機会になりました!