休暇の日に患者さんからメールが入った。
久々のメールだった。
・・・が、患者さんからではなくて、ご家族さんからの代行メールだった。
亡くなられた。
との報告を受けたのだ。
携帯電話の履歴からかアドレス帳からか分からないけども、娘さんが僕に連絡をくれた。
この患者さんは、まだまだ元気であった時に、僕に多くのことを教えてくれた。
その中でも中心となっていたのは、『ラーメン食べ歩き』だった。
ラーメン好きの患者さんは
とにかく美味しいラーメンを探してあちこちに行くのを好まれた。
「どこか美味しいところ見つけられましたか?」
と外来に来られるたびに聞いていた気がする。
患者さんの病気は悪いもので
具合も悪くなり、入院することとなり
ラーメン食べ歩きができなくなってしまった。
「入院中は、僕が食べ歩きしますからね!」
なんて、話しかけながら、
どうにか元気を分け与えたい気持ちになっていた。
患者さんはどんどん弱っていった。
病院や、リハビリテーションというところは、必ずしも快方に向かう患者さんのみではない。
むしろ、そうでない場合の方が多いのかもしれない。
すこし前、元気であった患者さんも
酸素マスクを付けて、弱々しくなっておられた。
リハビリの処方は終了になっていたけど、お部屋には伺った。
真っ暗な夜の時であったり、日中であったり。
行かない日もあったし、寝ているのを邪魔しないように覗くだけの日もあった。
『kazz先生がくると、意識がハッキリするから、いつも来てください』
ご家族のそういったことば、僕自身が励まされた気がする。
患者さんの終わりの日・・・いまから思えば終わりの日なんだけど
そういった頃になると、ご家族も、案外にあっけらかんとしておられた。
内心は不安で一杯だったかもしれないけども、しっかりと「その時」を理解しておられる様子だった。
患者さんに声をかけても、
どんな励ましのことばも見つからず、僕はやっぱり、ラーメンの話をした。
「教えてもらったお店。あそこはヤッパリうまいですね!」
と声をかけた。
患者さんは酸素マスクにこもった声で答えられた。
『あぁ、ラーメンか。いいねぇ、また一緒に行こうよ。』
と・・・
亡くなられたのは、それから数日も経たないうちだった。
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僕はこれからも、ラーメンを食べるたびに、きっとこの患者さんのことを思い出すと思う。
どこかで折りに触れ思い出すと思う。
そうやって患者さんは生き続ける。
『あぁ、ラーメンか。いいねぇ、また一緒に行こうよ。』
と思い出すと思う。
そういったことを、ご冥福のことばに添えてメール返信しておいた。
アドレス帳にのこる患者さんの名前
消さずにのこしてある。
コメント
Unknown
カズ先生のブログを読んで泣いてしまいました。
私は通所リハに勤務していますが、「絶対に先生に会いに帰るから」と言って下さってたのに・・・という経験も臨床経験が増えるのと同時に増えてきました。
家族さんやケアマネさんから、利用者さんの最後の伝言やお手紙を頂く度に、利用者さんに何もできなかった自分に腹が立って、腹が立って。
何年、何回経験しても悲しくて辛いです。
自分語り、すみませんでした。
>希さん
こんにちは
泣かせてしまってスミマセン。
というか、しっかり読んでいただいて、有り難うございます。
伝えることができてよかったです。
さまざまなかたちで、患者さん達は生き続けます。
こういったご縁に感謝したいと思います。