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電話

受付から

「患者さんから・・・」

と受け取った受話器の向こうには、震える声・・・

声の主は、僕の担当していた患者さん・・・の娘さんだった。
患者さんはもう転院されて、向こうの病院でリハビリを受けているはずだった。

娘さんの声の様子から、明らかにめでたい話ではないことは分かったし、かなり当惑している様子も伝わってきた。

どうやら、ウチの病院から転院されたものの、問題を抱えているらしかった。

簡単に言えば
患者さんは、むこうの生活が気に入らないらしいのだ。
無理なリハビリで痛みが出るし、その訴えを聞き入れてもらえないらしかった。

もともと痛みのせいで少し鬱(ウツ)的な印象を受ける患者さんだったのだが・・・

どうやら耐えに耐えかねて、娘さんに爆発したらしい。

で、どうにかまたウチに帰ってきて僕のリハを受けることはできないだろうか?

という内容だった。

システム的に答えは「ノー」だった。
しかし、おそらく考えに考えて悩みに悩んで電話してきてくれた患者さん(と娘さん)の訴えを無碍に断ることはできなかった。

とりあえず、こちらの主治医に連絡して相談しますという内容の返答をしておいた。
そして、また折り返し連絡をすることにして受話器を置いた。

以前、その患者さんを転院後に訪ねたことがあったが、すでに不満をもらしていた。
主治医はほとんど顔を出さず、リハも一方的な訓練をしていて、看護師もゆっくりと接してくれないといった内容だった。
実際がどうか知らないけど、患者さんの受け取り方としては、とてもよい環境とは言えない様子だった。
(こんなこと言ってしまっていいのか分からないけど・・・)

そのときは、環境の変化もあるからいずれは慣れてくれるんじゃないかな?
・・・なんて思っていたんだけど。

正直な話・・・
施設がかわってしまったら、僕は無力。
患者さんの治療について、もはや何も訴えることはできない。
一般のお見舞客としてしか、患者に近づけない。
もちろんそんな訪問に対してウェルカムな病院もある。しかし、疎遠な病院もあるのだ。

なんか、こんな時つらくなるのよね。
・・・患者さんを見捨てたみたいで。

適当に割にあう返答しかできなくなっている自分に腹が立つ・・・

「ごめんね。ほんとうは何もできないんだよ」

・・・

さて・・・

娘さんの電話についてリハ医にも相談したのだが、やはり、ウチでは受け入れることは難しいということだった。

やっぱりな・・・分かってたことだ。

分かりきった答えを、また娘さんに電話する。

「そうですか・・・」

って残念そうな声を聞いた時、やりきれない気持ちになった。

「またいくらでも困ったら、いつでも電話くださいね。」
「近くにあいにいくから、そう伝えておいてください。」

不謹慎だけど
なんだか、患者さんが死んでしまうんじゃないかという錯覚にとらわれてしまった。

急がねばならない・・・
急がねばならない・・・

院内のモメ事の解決も、地域連携も、目の前の患者さんの治療も・・・

そうしなけりゃぁ、患者さんが死んじゃうんだ!

コメント

  1. 女医M より:

    後方の立場から
    今病院は地域の中でそれぞれの役割を果たす事に一生懸命ですよね。

    結果、ある時期がくれば転院ということが多いわけだけれど、患者さんの中には「不本意」のうちに「追い出された」と感じている人も残念ながらいらっしゃいます。正直受け入れるこちらも辛いです。

    セラピストや医師が同じ場で、患者さんの見ている前で引き継ぎや情報交換出来る場があればもっと連続性を持った「移動」になるのでは…と考えることがよくあります。
    そのほか思うのは患者さんは、他の患者さんの頑張りに励まされる事もけっこうあるな、ということ。
    病気で体力の落ちている患者さんはとにかく辛いこと、痛いこと…嫌いです。恐怖でもあるのでしょう。

    師匠、浜○先生は「もう一度生きて行く勇気を養う場」だからと院内環境にも手を抜きません。
    セラピストにも檄を飛ばしまくります。
    「みんな頑張ってるんだ」っていう雰囲気作りも大切なんだと思います。
    頑張ろうか…
    てか、師匠から元気玉作りたい(笑)

  2. cyama より:

    Unknown
    KAZZさんの気持ち、立場は違うけど、分かるような気がします。兄夫婦と暮らしている認知症の母に、いつも、何もしてあげられない無力な自分に、空しさを感じています。先日も、いつも足がむくんでいる母に知り合いの人が、いいストッキングがあって、自分の母はそれで良くなったからお医者さんに相談されたらと言われ、姉が兄嫁に話したんです。勝手に何かすると、すごく機嫌が悪くなるので。(日頃から兄嫁が、何故かむくむ事だけは、すごく、気にしているので姉はよかれと思って)控えめに、優しく言っていたのに、(私もその場にいたので)夜、兄(姉より3歳年下)が「お前らは、いつもトンチンカンな事ばっかり言って、どうなっても知らんぞ。今からタクシーで、すぐ来い!」と電話をしてきたそうです。姉は胸の動悸や目眩でどうにかなりそうと言うし、母が八つ当たりをされているんじゃないかと不安になるし。喧嘩をするのは、たやすいことです。今まで何度もこんな事を繰り返していて、切れそうになる事も数え切れなくありました。でも、その後の母の事を思うと何も出来ないのです。父の死後、母に「何かしたい事ない?」と聞いたら、寂しく笑って、「消えて無くなりたい」と言った言葉が忘れられません。愚痴を言わない母だけど、父という重石が取れたとたんすっかり変わった自分の境遇を、母なりに感じて、出た言葉とだと思うからです。                                         ごめんなさい。KAZZさんの辛い時に、何もアドバイスも出来ず、愚痴を並べ立ててしまいました。私は、まだまだ、修行が足りません。

  3. kazz より:

    >女医Mさん
    そうですよね~
    「追い出され感」ってあると思います。

    院内でリハ病棟にかわるときだって、あるんですよ「追い出され感」!

    転院ともなるとよけいに強いと思います。

    そして
    こちらのスタッフもどうしていいのか分からない部分も多分にあると思います。

    患者さんもスタッフも未知の領域なんです。
    転勤先・・・

    「あちらではリハビリしっかりとできますよ~」

    てなこと言って、現場なんか見たことないんですから!!

    だから、自信を持ってお送りすることができないんですよね・・・

    はぁ・・・
    ジョブローテーション考えましょうか・・・

    て、まず意見交換からですかね!

    元気玉よろしくお願いいたします(笑)!

  4. kazz より:

    cyamaさん
    いえいえ!いつもありがとうございます!
    どんどん愚痴っちゃってくださいまし(笑)!

    病院と病院だけでなく、家族(親族)の間にもこういった問題ってあるんですね。
    (考えてみれば社会の単位として当然ですね・・・。)

    何もできない辛さって、どこにも有るのかもしれませんね。

    いろんなところに目を配りつつ、どうにかしていきたいものです。

    がんばりますっ!

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