いつも通り

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午前6時半・・・
僕は職場へ向かうため、いつもどおり始発の境港線の列車にのった。

境港線は弓ケ浜半島を端から根元まで結ぶローカル線。
終点は半島の根元・・・米子駅。

職場のある松江へ向かうには、この駅で乗り換えをして出雲行きの列車に乗る。

いつも通りの朝だったのだが・・・

7時を手前にして、列車はトンネルを抜け、民家と山に挟まれたのどかな田舎道をとおり次の安来駅へと向かうはずだった。

突然!
車内には明らかに異常を告げる警報が鳴り響いた!

どうしたんだ?

と思っている間に列車は急停車した。

「線路上に不審なものがあったため、停止しています」

車掌からのアナウンスが流れた。

不審なもの?

停車した列車はなんだか寒い・・・
僕は脱いでいたコートを再度着込み、何事か分からない事態に備えた。

車掌は『不審物』の確認のため列車を降りているらしかった。

僕の座席は進行方向とは逆の運転席のすぐ近く。
車掌はドアを開けたまま飛び出たのか、冷たい風が吹いてくる・・・

列車は『不審物』を発見した後に急ブレーキしたため、列車のかなり後方にそれがあるらしかった。
車掌は列車を降りて、そこに向かったのだ。

しばらくしてから
いつのまに戻ってきたのか、車掌の声が聞こえてきた

『もしもし、車掌です!』

車掌は息切れしていたが、はっきりとこう言った。

『人です!』

本部・・・というのか分からないが無線で連絡しているのが聞こえてきた。

どうやら、線路脇の不審物は・・・『人』
らしかった。

この時点で、生死不明。

■07:03
運転室から聞こえてくる声・・・
「人が倒れています。しばらく停車します。」
「・・・男性と思われる。」

■07:05
「救急車の手配をお願いします・・・トンネルでて右側み・・・9号線が横に見えてくるところ」
運転室からの声は部分的に聞こえてきた。

■07:06
車内アナウンス
「線路と線路の間に人が倒れているため救急車を手配しています。」
生死は不明のまま。
しかし、その表現から、この列車が轢いたのではない様子だった。

■07:08
車内アナウンス
「これから当分の間発射することができません。」
そして救急車などの手配と、外に出ないように促すアナウンスが行われた。

■07:11
ドアのしまる音。すこしは寒さが改善するか?

しかし、当分寒さはおさまらなかった。
この列車には十分な暖房はないらしかった。

■07:12
車内アナウンス
「現場に運転手・車掌とも向かいたいと思います」

■07:15
車内アナウンス
「運転手は運転室に残ります。」

先ほどは、二人とも現場に向かうとのアナウンスだったのだが・・・
明らかに慌てている。

■07:21
車内アナウンス
「ただいまから警察の現場検証が行われます」

「現場検証」って・・・はやり人身事故か?

■07:31
車内アナウンス
「ただいまから運転手、車内にまいります」
気分不良の人がいないかなど気配りをされている。

このころから、僕は列車後方を見るようにした。
警察官、救急車、消防車、パトカー・・・

運転席を通り越してそんな様子を眺めた。

■07:41
担架が救急車から出される。

■07:47
車内アナウンス
「線路と線路の間に人が倒れているのを発見したため停車しております。現場検証が終わるまでこの列車は停車します」

■07:51
担架が救急車へ。

■07:57
救急車、消防車現場を離れる。

■08:06
車掌が車内に戻る。

■08:07
「運転手車両の点検をしています」
「線路と線路の間に人が倒れているのを発見しましたが、かなり前の時間にお亡くなりになっています」

やはり・・・というのは忍びないが、死亡されていた様子だ。
また、表現からこの列車が轢いたのではない様子が確認できた。

■08:13
車掌が各乗客に行き先を聞きにまわる。

その後アナウンス・・・
「運転再開に向けて全力を挙げております。」

■08:18
「お亡くなりになられた方のご遺体はお運びしておりますが、ただいま警察による現場検証を行っています。列車は上り/下りとも運行を見合わせております。先ほど運転手が列車の点検を行いましたが、列車に異常はございません」

■08:27
「間もなく発射いたします」
アナウンス後、発車。再度お詫びアナウンス。

・・・

列車は結局1時間半ものあいだ停車していたことになる。

空腹と寒さが身にこたえたけども、この時間的にはあっという間に感じた・・・

そして、列車は走り出し・・・
人を山ほど待たせた駅を4つほど通り過ぎ、僕は松江駅でおりた。

結局、公的交通機関の送れということで、遅刻は不問。

白衣に着替え、いつも通りに仕事ができる自分が不思議に感じた。

一人の男性の死は、列車を90分止めただけにとどまるワケがないのだが、それにしては世の中は平静を保っている。

バケツの中に一滴の絵の具をたらしたように、この列車ですごした時間自体がうっすらと存在を消していくように思えた。

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米子‐安来駅間で発生した人身事故の影響で、列車に遅れが出ていましたが、12:00現在、ほぼ平常通り運転しています。
(更新時間:01月28日 12時00分)
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この記事へのコメント

  1. Unknown
    82歳の男の方だったそうですね。そのお年頃の方の不幸は、いつも、自分の両親の事のような気がして辛くなります。その電車にKAZZさんが乗っておられたなんて!                                            見知らぬ人でも、ショックですよね。自殺だったのか、徘徊の末だったのか、事故だったのか、色々考えてしまいます。82年も生きてきて、最後は、穏やかな死を迎えてほしかった。色々苦難を乗り越えてこられたでしょうに、こんな最後は、悲しすぎます。

  2. >cyamaさん
    本当に悲しい事件です。
    新聞にも出てましたね。

    何があったのか、分かりませんが、寒空のもと無くなられたおじいさんに、ご冥福をお祈りします。

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