老年期医学(Geriatric Medicine)の10月号
■随想 老いるということ(10)
この雑誌の中で
杉田玄白「医事は自然に如かず」
というタイトルで小沢利男先生(高知大学名誉教授・東京都健康長寿医療センター名誉院長)が記事を書かれている。
この記事の中で、玄白が子孫のために残した『養生七不可』を紹介されている。
1:昨日の非は後悔すべからず(後悔しない)
2:明日の是(ぜ)は慮念すべからず(未来に期待しない)
3:飲と食は度を過ごすべからず(暴飲暴食を戒める)
4:正物に非(あらざ)れば苟(いや)しくも食すべからず(出所の分からない物は食べない)
5:事なき時は薬を服すべからず(薬をみだりに服用しない)
6:壮実を頼んで房を過ごすべからず(過度の性行為を慎む)
7:動作を勤めても安しを好むべからず(運動習慣の勧め)
そして、こう評されている
『特にはじめに過去のことにくよくよせず、、未来に期待もせず、現在只今の仕事に集中せよというメンタルヘルスに重点を置いたのは注目すべきである。』
続いて、偉人の言葉を紹介している。
「我、事において後悔せず」(宮本武蔵)
「後悔することはあやまちを繰り返すことだ」(スピノザ)
「過去や未来を考えている人間が、完全に幸福になることはあり得ない」(アラン『幸福論』)
そして、杉田玄白の歌である
「過ぎし世も くる世も同じ 夢なれば けふの今こそ 楽しかりけり」
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たしかに、「過去」や「未来」は大事なものだと思う。
けども、そこに心をとらわれ過ぎて、「今」を見失ってはいけないということだと思う。
過去もみ来も直接的には働きかけることができない。
だから、いま在ることに目を向ける、それも玄白の言うように「楽しかりけり」の精神でいたいと思う。