Categories: 理学療法/病院

リハ研究会 in 米子

さて、昨日の本業、リハビリについての話題。

■第15回 リハビリテーション研究会 in Yonago

第15回にもなるらしい・・・

『一般演題』と『特別講演』の二本仕立て。
『一般演題』では鳥取ー島根のリハビリ関連職種が発表を行い、『特別講演』では講師をお招きした講演。
今回の特別講演は

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『高齢者の地域リハ医療システムのあり方』
初台リハビリテーション病院 石川誠先生
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一般演題はそこそこに、特別講演を目当てにしていたのだけども、昨日のごとく奇妙なご縁で早く会場に着いたので、一般演題の第1セッション(4題)には聴衆参加した。

どの発表についても、コメントがあったのだが、黙っていた。
しかし、最後の第4題については、自分の痕跡を残しておこうと思い、発表のマイクの前に立つことにした。
(常々、コンベンションの音響の方から、「質問に立ちなさい」とリクエストを受けていたことでもあるし・・・)

質問に立った、演題は
「地域高齢者の転倒に影響する因子」

実は、演者は恩師であり、学生時代の授業でも実習でもお世話になった方である。
教わったことは今でも僕の臨床に生きているし、柔軟な発想が必要であることと、理学療法が医療・福祉の中で薬剤にも・手術にも匹敵するポテンシャルを秘めていると力説いただいたことは今でも心に残っている。

演者の肩書きにPh.D.(博士号)がついていたので、相変わらず突き進んでおられるのだろう。

とはいえ、発表に対しては疑問が残った。
(むしろ、疑問が残らない発表の方が少ないが・・・)

転倒要因を地域高齢者にアンケート調査するという後ろ向き研究なのだけども、アンケートで調査する項目(あるいは結果)の中に、『疼痛』がない・・・。

『生活様式』については言及されているものの、『疼痛』については触れられていないのだ。

ここで思い出すのが、
「Chronic Musculoskeletal Pain and the Occurrence of Falls in an Older Population」

去年の11月25日号にJAMAに発表された論文。

これは
MOBILIZE of Boston stady
というので、出されたものだ。

ちなみに、このMOBILIZE(モウバライズ/モビライズ)というのは

高齢者の健康と自立を、どうやって持続させるかを学ぶためのものだ。

Maintenance of Balance, Independent Living,Intellect, and Zest in the Elderly


この頭文字をとったものが『MOBILIZE』となる。

ここまでくるとセンスが良いのか悪いのかわからなくなる。

さておき、今回の発表と同じく、地域高齢者の転倒危険因子を調べたものが
「Chronic Musculoskeletal Pain and the Occurrence of Falls in an Older Population」
(筋骨格系の慢性頭痛と、高齢者の転倒発生)
と、題されたものだ。

これはMedscapeにも記事として紹介されていた。
「Chronic Pain Linked to Risk for Falls in Older Adults」
(「高齢者の転倒リスクに慢性疼痛が関連している」)

ここでは『2カ所以上の筋骨格系の慢性頭痛が転倒と深く関係している』と突き止めている。

ここで、言いたいのは、
『転倒と関連している』ことであって、『転倒の原因となる』とは言われていないこと。
そして、Medscapeのインタビューでこう答えられている。

「患者さんの訴えられる『うづき』や『痛み』ってのは、重要なハザードとして関連深いってことさ。今まで考えられてきたよりもね。見過ごされていながら、もしかすると高齢者の転倒要因となるかもしれない慢性疼痛の存在がわかったことに意義がある。今後は、この慢性疼痛を改善させた時に転倒リスクを減少させることができるかをRCT(無作為化比較試験)でもって研究することが求められるだよ」(※kazz訳のため、注意)

と、こう言っている。

転倒において慢性疼痛は無視できない存在だと思う。

が、今回の発表では「和式トイレがどう」とか言うに留まっている。

『ボストンの地域高齢者が、和式トイレを使っているか?』というアイロニーはさておいて、とにかく、疼痛についての配慮は「転倒」を語る上で重要な項目であるに間違いない・・・と、そう思う。

んで、このことをマイクの前に立ち「どう思われますか?」と尋ねたところ、

「とかく、理学療法士は疼痛について云々しますが」だとか
「疼痛について中国ブロックで発表されているので、参照ください」

とか、トンチンカンな答えが返ってくる。

どう思うかを聞いているので、「参照してみてください」はないでしょう。

・・・とは、学会会場では言えない。

何だか、はぐらかされた感じだな。
(あとで聞いたのだが、時間が押していたらしい。僕は5分くらい余っていたと思っていたのだけども・・・)

まぁ、この演題で会場を一旦引き上げたんだけどね。

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さて、
一度会場を引き上げて、次に帰ってきたのは、特別講演

『高齢者の地域リハ医療システムのあり方』
初台リハビリテーション病院 石川誠先生

なんだか、ドラえもんの歌みたいに、「あんなこといいな、できたらいいな」見たいな話だった。

要するに、「あそこを手厚く、ここを手厚くしたらうまく行く」というものだが、

こういった話は、たいがい「あちらを立てればこちらが立たぬ」といったスイッチやシーソーみたいなもので、民主党の政策みたいなものだ。
夢を語るのは良いけども、全体論で考えると廃案になるか、もしくはどこかに迷惑をかけるかになる。
ここ数年、医師や看護師、そして病院経営者たちは、そういったことで翻弄されてきたのだけども・・・今後も大丈夫だろうか?
結局、煽(あお)りを受けるのは、患者さんなのだけども。

煽りを受けた患者さんを「救う」ために、別の患者さんがさらに煽りを受けるという、エッシャーの騙し絵のような社会・医療システムがどんどん構築されているような気がする。

ちなみに、某医師の質問で明らかにされたのだけども、どこにどのくらい足りていなくて、どこにどのくらい必要かという試算はまったくされていなくて、ご自身の地域での印象でしか計算(というか印象概算)されておられなかったので、この先より暗雲立ちこめた気がした。

質問に立たれてた某医師には感謝していいのやら、どうやら。
いい示唆にはなったけども。

さて、
もう一つ拳を握る場面があった。

『看護師と介護士は、もしかすると針を刺すかささぬかといった違いしかなくなるかもしれない』
といったトンデモ発言や
『そういった垣根の低さを、PT・OT・STにまで拡大していってもいいのかも』
といった発言まで飛び出した。

この会場で暴動が起きた場合は、僕が身体を張って沈静にあたろうと思っただけども、誰も静かに聞いていたのには呆れた。寝ていたのか?

鳩山さんの宇宙人光線で、日本を牽引する人達の頭がどうにかなっているのではないか?
どこかの新聞に、なんとかって書かれないといいけども・・・

とにかく、チーム医療/チームアプローチを推奨する人が、チーム内の専門家の専門職域の垣根を低くしてもいいって言うのはどうかしていると思う。

専門職が集まるからこそチームなんでしょ?

「ウチのサッカーチームは全員ミッドフィルダーだぜ、キーパーとかは上手な人が時に応じてやるもんね」
「ウチの野球チームは全員がキャッチャーするけど、いざという時はこの人がキャッチャーすることにしてる」
「アンカー?まぁ誰でもいいです。誰でもできる体制ですから」

(  ̄□ ̄;)オイオイ...

こんなんでいいのかいな?

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こういった具合の特別講演。

良い示唆にはなった。

なんだか、僕の性格が悪く、それ故に大切な部分を聞き逃してしまったのかも知れない。

多くの人から信頼を得るリハビリテーションの大家であるし、この方がいなくては日本のリハビリテーションの利益が大きく損なわれていたことだと思う。

ただ・・・
やはり、僕にとっては疑問は疑問であり、不安は不安である。

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参考

KAZZ BLOG「リハビリ」関連の記事
KAZZ BLOG「リハビリ」関連の記事
KAZZ BLOG「チーム医療」関連の記事
Medscape Medical News『Chronic Pain Linked to Risk for Falls in Older Adults』
JAMA『Chronic Musculoskeletal Pain and the Occurrence of Falls in an Older Population』
MOBILIZE BOSTON
JAMA
Medscape

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足川 和隆 理学療法士18年生! 毎日、始発で出勤、最終で帰宅の米子~松江の通勤をしています!

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