今から13年前.
高校生だった僕は
友達に案内され,狭く薄暗い階段を上っていった.
白いドアーを開けると狭い店内.
正面に黒いピアノ左手にカウンター.
アンティークっぽい骨董照明と木の椅子やテーブルが隠れ家のようなカフェを演出していた.
■Cafe' de' Soleil
ソレイユは「よくあるカフェ」のようでもあったし,「知る人ぞ知る」カフェでもあった.
あるいは,どこのカフェでも,そのような雰囲気を持っているのかもしれない.
そこに集う客それぞれが,いろいろな価値でもって各々の「行きつけ」を決めているのだと思う.
大学に行くことのみが,高校生に課せられた使命であるかのように進んでいく毎日に飽き飽きとしていた.
それも,高校生ならでは「逃避」だったのかもしれないが,人並み劣る努力でもって進学校に通う僕には,笑えるほど純情な高校生活も「退屈」で表現されていた.
本を読む事を覚えた僕には,ソレイユは格好の教室となった.
カウンターの奥にいる女性マスターは,同級生の母で,精神的にやんちゃな新たな家族を気軽に迎え入れてくれた.
ソレイユはいまは,もうない.
店が終わり行く日を,僕は実習先の広島で過ごしたことを記憶している.
(つづく)