日本語にはもともと「自然(しぜん)」というコトバは無かった。
これは明治後期に、外来語「nature」(英:ネイチャ、仏:ナチュール)が翻訳されたものらしい。
それまで、そのコトバがなかった。
コトバが無かったというのは、その「自然」という発想(西洋式には、『人が支配し征服するもので、未開野状態』を意味するもの)が無かったということだ。
だから、「nature」にの訳としては、江戸時代まで仏教用語として使われていた「自然(ジネン)」が用いられた。これは「あるがまま」という意味だ。
自然:オノズカラ、オノズカラシカリの方が日本人らしい。
言葉を使うことで、いろいろなモノが分類され、わけられていく。
意識を生む。
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さて
医療界にも、多くのコトバが生まれては消えていく。
そういったコトバの数々は「消滅する媒介者(vanishing mediator)」の如く、刹那的に現れ消えることによって、その後の社会動態を規定する。
山本晋医師は『心臓外科医の覚悟』で
『チーム医療』という語を否定されている。
はっきりと、「私はこの言葉が嫌いである。」と述べておられる。
それは、「チーム医療」と呼ばれるものが、わざわざ言葉として「言挙げ」されなくても、当たり前のものとして備わっている(はず)べきものとしての認識をされているからだと思う。
曰く『つまり、チームになっていないからチームと言っておかないと病院機構では皆がバラバラになってしまう・・・。そんな気がしてならない。言い過ぎだろうか・・・?』
もっともだと思う。言い過ぎではないし、表面的な皮肉でもなかろうと思う。
少々長くなるが、引用を続けたい。
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その目的を達成するためには組織としての最高のパフォーマンスを患者に提供する以外に無い。組織は各職種の複合体である。組織としての最高のパフォーマンスは、それを構成する各職種が最高のパフォーマンスを発揮したときに始めて発揮される。(中略)一つの医療を前にして、一人の患者を前にして、それぞれの職種が全力疾走をする。チームとして走っているわけではないが、走っている自分の隣には、やはり同じように同じ目的に向かって全力疾走している他職種のスタッフが見えるのである。そして、そこで生まれるのが、お互いに対する”尊敬の念”なのである。(中略)お互いを尊敬し、その職種を尊敬し、その行動を尊敬すれば、もはや”連携”や”対等”などを強調する必要などなくなるのではないかと思う。敢えてチームという呼び方をしなくても、それ自体が精鋭部隊と化しているのである。そして、他職種から尊敬されるためには、全力で己の職務に取り組む以外には方法はないのである。(山本晋『心臓外科医の覚悟』p.167-168)
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やはり、いまのところ論文に踊る「チーム医療」というコトバは、手垢にまみれてしまっていると思う。
医師ではないが、公安9課を取りまとめている荒巻大輔の言葉を借りよう。
『我々の間にチームプレイ等と言う都合のいい言い訳は存在しない。必要なのはスタンドプレーの結果として生じるチームワークだけだ。』
ちなみに、
山本晋医師が、『理学療法士』をどのように語っておられるか?
一介の理学療法士として、これほど嬉しい期待と理解は無いと思う。
涙ぐんだので、最後に紹介しておきたい。
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たとえば理学療法士。大動脈医療の成否はいまや手術の成否によらなくなってきている。手術方法はほぼ完成の域に達しているが、近年の超高齢化、術前合併症を持つ患者の増加により、術後管理、特に術後リハビリテーションの成否が、患者の予後を左右する大きな因子となっている。その中で、理学療法士の役割は計り知れない。患者の身体機能を理解し、いまどのような身体機能を強化することが患者の回復に最前なのかを見極め、それを実践する。看護師による医学的管理だけでは回復し得ない機能を、いかに回復させるか。リハビリテーションを加えていかなければ身体機能が交代していく患者を、回復方向に導くのが理学療法士である。例を挙げればきりのないほど、病院内にはプロフェッショナルと呼べる専門職が多く存在している。(山本晋『心臓外科医の覚悟』p.164)
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