BRAIN and NERVE-神経研究の進歩
という雑誌がある。
雑誌ながら2,730円もする。
人気もあるらしく、品切れのものも多数。
病院図書館に行けば無料で読むことができるので購読はしていない。
もちろん、と言っていいと思うが、リハビリテーション関連の記事も多いし、理学療法士として気になる記事も多数ある。
その反面、読んでも意味の分からない(高度・専門的)なものも多いのだが・・・。
今回(2011年8月号)も、いくつか心惹かれるものがあったが、特に
特集「日本人の発見した神経兆候」のなかの
■逆Chaddock兆候 Reverse Chaddock Sign 田代邦雄
という論文。
是非、読んでもらいたい。
そもそも、僕が学生の頃は
『Babinski反射は、錐体路の障害による病的反射』
程度でしか教えられていなかったし、ほとんど疑問を持つことも無かった。
そういったものがあって、検査するもんだといった具合だったと思う。
チャドックも同様。
臨床に出てから、患者の足底を、靴の裏で刺激して脱感作(desensitization)とかいってアプローチするのも見たことがあるのだが・・・果たして有効なことか分からない。
いまだに足底刺激に対する反応を『知覚の過敏がある』と表現するのは、いささか不思議な気もしたりする。
講師曰く「セラピストはバビンスキー反射を(検査で)出して喜んでいてはダメです。歩くためには減弱せねば・・・」という内容であったかと思う。
さて、
上の論文で、吉村喜作(1879-1945)の紹介がされている。
(※敬称略)
チャドックが『チャドック反射(当時は「external malleolar sign」)』を発表したのは1911年。
しかし、同様の手技を吉村喜作は1906年に発表しているという。チャドックの5年前だ。
これは日本語のもので、世界には見過ごされたかもしれないが、ドイツ語で同様の手技を記載したものが1909年に出されているらしい。それでもチャドックの2年前になる。
別に早さを競うものではないかもしれないけどもね。
BRAIN and NERVE8月号には、『吉村喜作による反射誘発の実際』としてp.845に写真で紹介されている。
たしかに
「Chaddock反射」も「Yoshimura反射」と呼称するのが妥当かもしれない。
また、本論文のタイトルにある
『逆Chaddock兆候(Reverse Chaddock Sign)』は足背を内側から外踝に向けて刺激を加えて、母趾背屈が誘発されることを陽性とする検査だが、これは1986年にこの論文の筆者が発表したものらしく、『Tashiro sign』と記述されることもあるらしい。
こういった検査のたぐいって、よくよく観察された上でまとめられたものなんだと思う。
それが、日本人が先駆けで発表していたなんてのは
同じ日本人として誇らしく思ってしまう。
申し訳ないことに、いままで僕のBabinski兆候や、Chaddock兆候について、あんまり思い入れが無かった。
この日本人2人の貢献に寄って、グイッと身近になった気がする。
見直そう・・・。