夕方、勉強会を終えて病棟に戻る。
リハビリ病棟の詰め所の横を通り過ぎると、花の香りがした。
大好きな百合の花の香り。
その方向に顔を向けると、やはり、ピンクの百合が生けてあった。
今日の良かったこと。
とある
患者さんの具合が良くなったこと。
百合の花が香って心が落ち着くのと同列に、このおばあさんの回復の喜びを再度感じた。
百合の花の強い香りに、同じく、強い生命力を感じる。
あの莟のあり方、花の咲き方、香りの強さに生命力を感じる。
・・・
手足は大きく腫れて、血がにじんだように真っ赤になっていた皮膚、速く波打つ呼吸、半開きの目・・・
先週まではそんなおばあさんが、今日はどことなくすっきりしていた。
手足の腫れもひいて、皮膚も肌色に戻ってきたし、目だって僕の方向を見ることができる。
発せられる言葉はわずかだけど、目を見れば訴えたいことが山ほどあるんだと・・・そう感じる。
「苦しい」「痛い」「喉が渇いた」「動きたい・・・
皮膚からは、急激に腫れが引いた成果、薄皮がはげている。
触ればポロポロと落ちる、日焼けの後みたいな状態だ。
このはがれ落ちる皮膚のカスを落屑(ラクセツ)と言う。
元気になってきたおばあさんの頭に櫛(クシ)をかける。
長い髪の奥から大きなフケがでてくる。
髪を整えようと思って櫛をあてればあてるほどに
次から次へとでてくる落屑・・・
決して奇麗ではないのだけども
どうしようもない愛情感じる。
『生きているんだ』
そういう、メッセージを感じた。
百合から香ってきたのは、そういった生命の力だ