90歳を過ぎたおばあちゃんのリハビリオーダー.
寝たきりのおばあちゃんに挨拶すると・・・
「しぇんしぇ~,,,頼んますけん,,,助けてください~」
ゆっくりと高く震えた声で,眉間を引き上げてこう言われた.
理学療法士として何が出来るか?
リハビリオーダーには,これ以上おばあちゃんが弱らないための機能訓練が指示されていた.
おばあゃんの助けを求める声に
『僕が助けてあげるよ!まかせてっ!』
って,そう心で思った.
しかし・・・
おばあちゃんは,こう続けた.
「はやく,,,はやく,,,天国に,行かせて下さい.頼んますしぇんしぇ~」
絞り出す声でこういわれたのだ.
僕は自分自身の罪の償いにもがき苦しみ,また罪を重ねている・・・
天国に行きたいと懇願せねばなるまいのは,僕の方だ!
おばあゃんを天国に連れて行くなど,到底できないよ・・・
理学療法士として何が出来るか?
それでも,おばあちゃんは僕に助けを求めているんだ!
応えられないでいる,僕に
おばあちゃんは,
「無理なお願いだとは・・・」
と,こう言い目を閉じられた・・・
傾眠(ケイミン)
軽い意識混濁である.
これが,おばあちゃんとの初日の出来事.
理学療法士として何が出来るか?
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今日は2連休明け.
昼前に,おばあちゃんのところに行った.
また「天国に行かせて」とお願いされるんだろうか・・・
おばあちゃんの部屋は個室に変わっていた.
目隠しのカーテンをくぐり部屋に入ると,
おばあちゃんはベッドに横になっていた.
声をかけるが,目が開かない・・・
でも,軽く頷いてくれるおばあちゃんに何度も声をかけた.
そして,車椅子に座らせてあげて,反応をみた・・・
やはり目が開かない・・・
もう,おばあちゃんは目を開けることが出来ないのかもしれない・・・
振戦なのか,口が小刻みに動いている.
もしかしたら,「天国に行かせて」って言っているのですか?
それとも何か欲しいものでもあるのですか?
どこか苦しいのですか?痛いのですか?
理学療法士として何が出来るか?
おばあちゃんの手を握る.
すると!
信じられないような力で,握り返してくれた.
しわしわの指が,僕の手を握りしめた.
この手で何を訴えているのですか?
一生懸命,何を訴えているのですか?
理学療法士として何が出来るか?
僕はただ
負けない力で,握り返した・・・
何年も理学療法士してきて
それしか出来ないでいたんだ.
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把握反射
握る手を握り返す力が増すのは
把握反射の名残だと、ある有名なリハビリドクターが
言っていました。
原理としてはそうかもしれないけれど、
私はそうとは思いません。
握る手には、反射以外にも、訴える力があるのだと
私は思います。
それは、いろいろだけれど。
大切にしたいのは、手を握る気持ちだと思います。
それに伴い伝わる温度は、
必ず相手の心にも響くと思います。
『死にたい』そう願う患者様に対して
“死”を提供できないのであれば、
生きる力を分ける努力をする事でしか
応えることはできないような気がします。
死なないで。一緒に生きよう。
そう思いながら握る手を、
おばあさんが感じ取れないわけはないと思います。
握る手
ありがとうございます.
明日もおばあちゃんのところへ行ってきます!
”生きろ~”って手を握ってきます!
理学療法士
はじめまして。僕は4月から新卒で働いている新人PTです。
こないだもTVで安楽死・尊厳死について取り上げた番組が放送していました。安楽死を賛成するDr.は「患者さんの意思を尊重したい」と言っていました。
さらに続けてこう言っていました。
「治療をやめて自然な状態に戻してあげる」(確か…ですが)
尊重したい気持ちは大変分かります。だけど、自然な状態???
人間としてそこに生命がある限り、「助けたい」と思い、手を尽くそうとするのが自然な状態だとも思います。
僕は3月下旬からPTとして働き始めましたが、まだまだ勉強不足で自分の無力感を痛感することも少なくありません。今回、このブログを読んで凄く感動しました。
理学療法士として何が出来るか?
このことをこれからも肝に銘じて患者さんや利用者さんに接していこうと思います。
>178さん
訪問&コメントありがとうございます!
そうですね!
死とか生とか定義しづらいけど,そこに必ず存在する.
直球で向き合う時もあれば,どう接していいのか分からない時もあります.
178さん言われる通り
「助けたい」と思う.
本当にこれが,純粋な気持ちです.
ただ,なかには業務としての医療をこなす人もいます.場合もあります.
(コレを”医療”と言ってはいけないと思いますが)
178さんもそういう人や場面に出会うことがあると思います.
僕は,戸惑いを覚えます.
「理学療法って人助けなんだ」って思っているもんですから・・・
生きること
生きることは、生きていることとは違うように思います。というか、思うようになりました。
いつの間にか、くだらない“医療”にとらわれ、
真の医療に向き合う自分を見失ってしまったのかもしれないですが。。。
人助け。
そう思って理学療法士になりました。
見なくてもいい場面や知らなくてもいい事実を知る中で、真実を見失わない強さが自分にはなくなってしまったのかもしれない。
kazzさんのブログを通し、178さんの新鮮な言葉を聴いて
自分の情けなさを知ることができました。
しっかりしなくては。。。
そうだっ!
しっかりしなくては!
(#゜Д゜)!!
Unknown
kazzさあああん!お願いだから、おばぁちゃんになにか楽しいことを見出してあげてください。
うちのおばぁちゃんは、「自分の足で歩けるようになりたい」と言いながら、寝たきりで亡くなりました。
何も出来なかった自分、何もしようとしなかった自分がとっても嫌でした。
淡々と仕事をこなすのではなく、患者さん個人のことを考えてあげてるkazzさんはとってもかっこいいと思います。
がんばってください。今後のおばぁちゃんのお話、待ってますね。
がんばる!
そうなんです!
僕は一般人ではなく,理学療法士です!
おばああちゃんやご家族よりも,医療情報やいわゆるリハビリに関する情報(そして技術)を手に入れやすい立場にあるんです.
だから,僕がなんとかしなければなりません!
あるいは,僕のせいで,おばあちゃんを不幸にさせるかもしれない・・・そんな存在でもあります.
とにかく,おばあちゃんに何か素敵なこと(←?)をする必要があります!
なにか一つ、ちょっとしたこと
毎日、一つで良いので何か良いところを見つけてあげましょう。そしてそれを一緒に喜びましょう。
安楽死、尊厳死という言葉とリハビリとは決して矛盾しません。いわゆるターミナルの患者さんも一人の人間として尊厳のある生き方をしていただくこともリハの大事な仕事だと思っています。早く死にたいと思ってしまうような状況に今なっている事に対してDrとしてPTとして何ができるのか。ほんのちょっとのこと、自己満足と言われても構わない、そんな小さな事を積み重ねていくことが医療だと思っています。
>某Dr.
ありがとうございます!
尊厳のある生き方・・・この患者さんについての尊厳ある生き方・・・いろいろ考えます.
一緒に喜ぶことって大切ですね.
PTの目でしっかりと見ていきたいと思います!