事故を起こした方へ
事故を起こした同僚・部下を持つ方へ
医療事故
というものがある。
予防が大切だけども、完璧な予防方法はない。
“To Err Is Human”
トゥ・エラー・イズ・ヒューマン
『だれにも過ちはあるもの』『この世に間違いをやらぬ人はない』という意味だ。
この考え方を根底に持っていなければならない。
ベテランでも新人でも、同様に事故を起こす可能性がある。
インシデント・アクシデントを起こして悩んでいる人は多くおられると思う。
一日中辛い気持ちのまま働いていることもあるかもしれないし、職場に行きたくなることもあるかもしれない。
はじめに結論を言っておく
あなたのせいじゃない。
あなたは直接的・間接的にその事故に関わったかもしれないが、あなたは要因の一つに過ぎない。
なので、自分を責め過ぎないようにしてもらいたい
その事故をきっかけに、皆がより学んで再発防止につなげていけるように・・・
過去の出来事に向き合うときに、「悲しむ」だけではなく、「ではどうするか?」「予防していくには」を考えることが大切だと思う。
なので、一歩すすみたかったら読んで参考にしてもらいたい。
事故を起こした方へ
事故を起こした同僚・部下を持つ方へ
『失敗』は分類することができる。
失敗がどのようなタイプのものか・・・考えたことあるだろうか?
インシデント・レポートはだいぶん世の中に広まったと思う。
これは、「ヒヤリハットレポート」としても広まっているけども、文字通り、重大事故ではないけども、「ヒヤリ」「ハっ」とした事例をみんなにひろめ、共通認識を持ち重大事故を防ぐためのものだ。
インシデント(incident)とは重大事故になる前の小さな出来事のことだ。
実際に起こった大きな事故をアクシデントという。
「インシデントレポート」という名称が広まったせいもあり。
「事故」であっても「インシデント」と表現することがあるけども、本当は「アクシデント」と表現した方が良いだろう。
・重大事件を引き起こしそうな出来事(インシデント)
・事故(アクシデント)
しっかりと分類しておいた方が良いと思う。
「インシデントがありまして・・・」
と報告を受けて、聞いてみたら内容はアクシデントだった・・ということがしばしばある。
この法則名は、法則を導き出したハーバート·ウィリアム·ハインリッヒに由来している。
彼が損害保険会社で技術·調査部の副部長をしていた時の1929年11月19日に出版された論文が元になっている。
ハインリッヒは、ある工場で発生した労働災害5000件余を統計学的に調べ、
以下のような法則を導いた。
1:29:300
「重傷」以上の災害が1件あったら、
その背後には、29件の「軽傷」を伴う災害が起こり、
300件もの「ヒヤリ·ハット」した(危うく大惨事になる)傷害のない災害が起きていた。
これは、『ハインリッヒの法則』として知られるようになった。
軽微な事故などを報告するヒヤリハットレポートなども、今後起こりうる重大事故を防ぐために集められるわけだ。
ハインリッヒの法則は事故分析の場面で広く知れ渡り、その説明に用いられるようにはなっているが、実際には、この比率には当てはまらないということも報告されている。
しかし、根底にある、考え方
重大事故には、それに至るまでの微細な出来事がある
という考え方は変わらず支持されている。
要因を考える上で事故のタイプについてもいくつかモデルがある。
例えば、『スノーボールモデル』と『スイスチーズモデル』だ
スノーボールモデル
スノーボールモデルは人を介することで、どんどん事故の要因や危険が増えていき、最終的な重大事故につながってしまうというもの。
事故を引き起こした当事者の前にずらりといろいろな失敗や危険が加わっていくのだ。
事故を引き起こした当事者のみに焦点を当てがちだが、これは間違いであろう。
スイスチーズモデル
またスイスチーズモデルは、人を介したのにも関わらず、そこをスルーしてしまい重大事故が発生してしまうというものだ。
英国の心理学者ジェームズ・リーズンが提唱した事故モデルだ。
事故は単独で発生するのではなく複数の事象が連鎖して発生するとしたもの。
医療事故の事例でも、よくある
「あの場面で、気づいていたはずなのに・・・」
「あそこでこうすれば、こんな事故起きなかったのに・・・」
などなど・・・
ここでもやはりひとりの人が単独で事故を起こすことは少ないことに留意する必要がある。
事故を分析するときには、多角的な視点をもたなければならない。
なんどもいうが、
ありがちなのは、事故当事者を責めること。
これは第三者が事故の当事者を責める場合もあるだろうし
事故当事者が自分自身を攻める場合もあるだろう・・・
『未熟だった』
とかいって当事者を責めたり、自分を責めたりするのはやめよう。
多角的に事故を分析する上で役に立つのは、
m-SHELL(エムシェル)
の考え方だろうと思う。
m-SHELL
の「m」はマネジメントこと。
SHELLは頭文字で、それぞれ
こんな具合になる。
(※ちなみにLiveware(ライブウエア)は人を表す造語だ。)
事故を考える上で、当事者はその要因の一つ(L)に過ぎない。
他のS・H・E・Lにあたるものについても分析しなければならない。
例えば、「その人をその仕事にそのような状況であたらせたところに危険が潜んではないか・・・」なんてことも考える必要がある。
また、当事者が事故を引き起こすに至った環境であったり、物品の問題などにも焦点を当てる必要がある。
とにかくさまざまなな視点で考えなければならないのだ。
冒頭で、「あなたのせいじゃない。」と記したけども、事故の要因を考えると、「あなたが事故に至った背景」←これを考えずして、「あなたのせい」としてしまうのは非常に短絡的で無意味なのだ。
もちろん、そんな考え方をしていては事故は予防できないだろう・・・。
m-SHELL(エムシェル)は医療の場では、Pを加える。
P:Patient(患者)
なのでPm-SHELL(ピー・エムシェル)になる。
多種多様な患者さんが医療現場におられる、疾患としての特性と、本人の性格が合わさっている特殊な「L」として考えた方が良いと思う。
そして、
それぞれの関わりについて考えることができる。
例えば・・・
さて、ややこしかっただろうか?
何か、インシデントなりアクシデントに遭遇したり、報告を受けた際は、すぐさまその背景のことも考えることにしよう。
特にPm-SHELL(ピー・エムシェル)の考え方のように
患者自身の特性は?(P)
マニュアルの問題は?(S)
機材、設備、施設の構造などは?(H)
環境はどうだったか?(E)
関係するスタッフの状況は?(L)
本人の要因は(L)
と・・・分析の思考を広げることができたら良いと思う。
そして、何よりも大切にしてほしいことは
だろう。
特に、事故に対面した本人にとっては、とても気を病むことだろうと思う。
当事者は自分を責めがちだ・・・
あるいは、人によってはすぐさま自分の責任回避に走る人もいるかもしれない
しかし、それこそ自身の責任を感じているからではないか?
もちろん患者さんの安全、回復を真っ先に考えなければならないのはもちろんだけども
そういった事故に当面したスタッフの心のケアも同様に大切だと思う。