特に買いたいものがなくても、本屋に行くと、ついついアレコレと手に取ってしまう。
最近は貧乏なもので(といっても以前から貧乏だが)、専門書の購入は控えているし、文庫本ばかりを選んでいる。
今日も5冊ほど購入してしまった。
ぶらぶらと本棚をみて何となく手にしてしまったものだ。
レジに行くと、3,516円を請求された。
文庫本なので、5冊勝でもこの程度で済む。
もうけた気分だ。なんて思いながら
端数の516円を財布の中から探していると、店員さんから何か声をかけられた。
良く聞き取れなかったのだが、『ハイ(・_・)』と答えておいたら、カウンタの奥からもう2名の店員さんがやって来られた。
どうも、先ほどはこの文庫本にブック・カバをかけるかどうかを聞かれたらしい。
カウンタの少し奥で3人の店員さんでブック・カバかけの手作業が始まった。
断れば良かったかも知れないが、すでに集結した3人を引き払わせるのも申し訳ない気がしたし、静かな店内で声を上げるのも気が引けた。
このブック・カバというのは、表紙を隠すためにあるのか護るためにあるのか、よくわからないけども、いつもはだいたい断っている。
そもそも、文庫本にブック・カバをかけたら、どの本がどの本か分からなくなってしまうので、僕の部屋のベッド周囲に散らかっている数多の本の中から、読みたい本を探し出すのにはそうとう苦労するだろう。・・・なんてくだらないことを考えたりもする。
そして・・・
ほとんど見分けのつかなくなった文庫本5冊を手渡された。
没個性
外見だけはほぼ同じだけども、中身にはさまざまな分野でさまざまなねらいや意思や思想が物語や説明として文字に化け詰まっている。
制服を着た人間と同じなのだ。
いや、人間の場合は、外見上の個性を強調しようとした割に、中身は没個性となっている集団を形成した感もある。
オンリ・ワンを目指して皆がオンリ・ワンとなり、個を没してしまったように。
喫茶に入り、珈琲をすすった。
一見没個性の文庫本を積み上げ、それぞれ中身を確認してまた積み上げた。