神経心理学者の山鳥重(ヤマドリ・アツシ)教授の本が出ていた。
この1月20日に出されたばかりだ。
たまたま行った本屋で見つけて、読んだ。
言葉と脳と心 失語症とは何か (講談社現代新書)山鳥 重講談社このアイテムの詳細を見る |
■言葉と脳と心~失語症とは何か
というタイトルなので、失語症に関するやさしい説明本かと思ったのだけども・・・
そんなことはない!
これって、かなり濃密な山鳥教授の失語症解説というか、考察だ。
新書なので、言葉は優しいけども立派な学術書として読める。
プロローグ:失語症を通して言葉を考える
第1章:名前がわからなくなる不思議 ~健忘失語
第2章:発話できなくなる不思議 ~ブローカ失語
第3章:聞いた言葉が理解できなくなる不思議 ~ウェルニッケ失語
第4章:いい間違いの不思議 ~伝導失語
第5章:脳の右半球と左半球の不思議 ~空回りする言葉
エピローグ:言葉と心の関係を考えてきて
それぞれのタイトルを見ると、単純に失語症の解説本にみえるんだけども、プロローグでは、失語に関する導入の話とともに、キーとなる「心像(シンゾウ)」というものの定義がしてある。
以降、この「心像」という仮説でもって、それぞれの失語症の病態や心の在り方について解説がなされる。
この解説が何とも、教科書通りではない、新たなる解説で面白かった。
たとえば・・・
音韻塊心像:感情に近い状態にある経験の塊
音節心像:近く状態に近い状態の経験
こういった語を使って、それぞれの失語症の病態を解説・・・というか何が起こっているかを推論しているのが面白い!
たとえばBroca失語についての解説でも
この心像を使っての説明で、Broca失語は発話レパートリの消失ではなく、言語プロソディーの障害の結果として現れると推察し解説しておられる。
それぞれの章で失語症を語って、トータルで、言語とは何か、心とは何かを語っておられると思う。
最後のエピローグについては、プロローグでの解説をさらに発展させた形で言語や心が捉えてあって圧巻!
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ちなみに、山鳥教授が意図してかそう出ないかはわからないけども、この本は各章の最後の1~2頁でもって、総括が平易な文書でくくられているので、これから読んでみようかと悩んでいる人は、各章の最後2頁だけ読んでみても面白いかもしれない。
合計10頁でだいたい雰囲気がわかると思う。