脳卒中発症後のリハビリは早期介入が良いのかどうか・・・
(※本日の記事での「リハビリ」は「=機能回復訓練」と考えてもらって結構)
大昔は、脳卒中にリハビリは行われなかった時代がある。
中枢神経系の機能回復は起こりえないから、やっても無意味だという立場、あるいは、その発想さえしないくらいのもの、だった。
近代になると、リハビリの介入が患者さんの生活を向上させるのみならず、機能回復に大いに役に立つことが分かってきた。
そして、神経にも可塑性(かそせい)が在るということで、やはりリハビリ介入の重要性がうたわれるようになった。
そして、どんどん早期に集中的な介入がより良いのではないかという議論も起こった。
これには、反対の意見もある。
早期の集中的なリハビリ介入は逆に機能回復を損なう可能性もある・・・のではないか、と。
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この度、AHA(American Heart Association)の発行するSTROKE(ストローク:脳卒中)という月刊誌(2011年1月1日号)に、リハビリ関連の論文が掲載されていた。
Very Early Mobilization After Stroke Fast-Tracks Return to Walking
Further Results From the Phase II AVERT Randomized Controlled Trial
(※コチラ参照)
というもの。
これは、タイトルの通りやはり脳卒中発症後の早期離床は患者さんの機能的な回復(歩行)を早めるんだという内容。
(早期離床で介入するグループと、コントロールに通常の脳卒中ケア行ったグループとで比較。指標にはBI(Barthel Index)、Rivermead Motor Assessment を使用。)
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リハビリ介入が功を奏するという論文を目にすると、嬉しくなる。
それも、このようなメジャーな雑誌でとり上げられるというのは、一理学療法士として嬉しい。
しかし、気になることもある。
そこに、技術が反映されていないことだ。
おそらくこの論文でもそうだろう。
(現段階では、雑誌が届いていないので、ネットでのアブストラクトでしか見ることができないから詳細は不明)
リハビリの技術というものは、画一的なものではない。
日本国内でも、さまざまなリハビリの考え方があるし、技術もさまざまだ。
最近はいわれないが、昔は理学療法の中に、さらに「特殊アプローチ」が存在していた。
(このようなアプローチはいまもあるが、「特殊アプローチ」とは言われなくなった)
こういった、「特殊アプローチ」の特殊な成果はいまのところ証明されていない。
つまり、それで介入したからといって・・・?というものである。
ボバースアプローチ、PNF、AKA(博田法)、認知運動療法(認知神経リハビリテーション)、その他何とか法・・・
さまざまなアプローチがあるが、結果から見ると特異性はないのかもしれない。
「証明することが難しい」というのもある。
そして、そもそも「効果的ではない」というのもあると思う。
方法論や概念が特殊なのであって、結果は特殊ではない。
それぞれの専門家の目からみても特殊性が証明できないのだから、それ(=特殊アプローチ)を受ける患者さんは、もっと分からないだろう。
どのアプローチも患者さんのためを想い、より良い結果を出すように心がけている、心優しいアプローチなのだと思うが。
特異的な結果はでていないのだが、こういったアプローチはそれぞれの体系のなかで診療を行うことを可能とし、それ故に限界も生じさせている。
これは決して悪いことではなくて、それぞれの体系だったアプローチがそこから生まれる限界を乗り越えるため、さらなる新しい体系を作り上げるという営みを生じさせ、その作業を繰り返す、これは周囲にその断片的な情報を残すことで、あらたなスタンダードを生じさせる。
つまり、こういう特殊アプローチの切磋琢磨が通常ケアの底上げを行っているということも考慮しなければならないと思う。
なにせ、世の中はとどまることなく歯車をまわしていて、こちらの態度にかかわらず、興味深い情報を提供してくれる。
Stroke「Very Early Mobilization After Stroke Fast-Tracks Return to Walking」
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