19時過ぎ
患者さんのお部屋にうかがうことにした。
新人君の担当しているおばあさんのところ。
新人君は「今からですか?」って言っていたけど、僕たちの仕事は17時で終わりじゃないんだ。
二人でベッドサイドに行く。
ベッドサイドでは具体的なアプローチを行わないが、患者さんがべッドから起き上がって座る姿や、お話から様々なことがうかがえる。
暗がりの部屋で、さして好きでもないサッカーのニュースを見ていたおばあさんは心よく僕らを迎えてくれた。
いましているリハビリのこと、体の具合のことを聞いた。
「こんなんで、人生終わりたくありません・・・」
丸く曲がった背中を伸ばして
ベッドに寝たおばあさんはそう言った。
おばあさんは強く思っているんだけど、なかなか言い出せないでいる。
自分には介護が必要なことが分かっているので、よけいに家族に気が引けて、言い出せない言葉・・・
「家に帰りたいです」
施設に行けば、プロの介護が受けられる。
ご家族も食事やトイレなど再三の介護に時間をとる必要はなくなる。
だから、本人にもご家族にも、施設に行くことが「お互いにとって幸せ」
と・・・家族はそう考えておられる。
もちろんそういう考え方やアプローチもあるのだが。
でも
なんだか・・・
おばあさんの言葉を聞くと・・・おばあさんが遠慮している(そうせざるを得ない状況)のような気がしてならない。
今までの生活では何をしていたのかを聞いてみた。
「寝てるか・・・犬」
そんだけ、犬が大好きみたいだ。
犬に押されてふらつくことなど、目をランランにしてうれしそうに話をしていたから。
多分、おばあさんは家に帰って犬に会いたい。
もっというなれば
「家で死にたい」
そう思っているんじゃないだろうか?
僕らは理学療法士
プロとして必要なことは、もちろん「知識」「技術」「勘」。
そして、そいつらを際立たせるのが「しつこさ」だと思う。
「しつこさ」は経験を積まなくても実行できる努力でもあるし、才能でもあると思う。
新人君にはこの「しつこさ」がない。
あっさりしている。
「なぜ、自宅でなくて施設の方向?」
と尋ねた時も
「家族がそう言っている」
と、そう答える。
「しつこさ」がない。
だから、新人君に聞かせてあげたかった。
「こんなんで、人生終わりたくないです・・・家に帰りたいです」
おばあさんの声を聞いてほしかった。
あとは、全力投球するんだ。
野球をやっていた彼なら大丈夫だろう。
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Unknown
本音は皆、心の奥底に隠しているんです。
誰にもでも、それは言えない。
心を許した数少ない人にキーワードをこっそり打ち明けるだけ。
ほんとは「帰りたい」と言いたい。
でも、言えない。
70歳以上の人達は
「他人様に迷惑をかけてはいけない」
と、言われてきた人達。
だから、なかなか言えない、その一言。
でも、その一言を本人の口から聞ければ何かが変わるかもしれませんね。
>pさん
こんにちは!
コメントありがとうございます。
本音を聞き出すことって、なかなか難しいですよね。
遠慮されてたりしますから・・・
後輩君は患者さんと打ち解けた感じでいい具合にやっているように感じます。
今後に期待です!