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大晦日

大晦日

いつもはノンビリと行う業務も今日は時間通り早めに切り上げて、駅に向かった。

外には雪が積もっている。
朝から雪が吹雪いていて、警報まで出されていたとの話も聞いていた。

列車も遅れがでているようだったけど、僕には好都合だった。

僕が松江駅に着いたとき、ちょうど遅れてきた特急列車が来ていたのだ。

特急料金はかかるけども、まぁ、この日くらい良いだろうと思い、乗ることにした。

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特急列車は止まるはずのない駅で止まったり、あるいは線路上で止まったりを繰り返していた。

大幅なダイヤの乱れに加え、信号待ちやら調整器の点検やらで、たびたびストップしなければならなかったのだ。

それにしても、JR職員もこんな日に大変だ。
そして、いい加減にしていないからこその停車だろう。
ぶっ飛ばして事故を起こすのも怖い。

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列車が米子駅に近づくに従って、停車回数は増えた。

米子駅到着のアナウンスが流れ、たところに、また停車という具合だったので、乗客の安堵の溜め息も、呆れのものに変わっていった。

米子駅構内でのトラブルがあったようで、列車はなかなか駅に付かなかった。

煙草が吸えない人や、仕事を抱えている人などが、イライラして電話をし始めた。

その後、列車は駅を目前にずっと止まることになった。

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僕は車両の一番前の席にいた。
席は空いていて、隣には誰もいない。

通路をはさんで向こう側の2席には親子が座っていた。
3歳くらいの男の子と、その母親。

小さい子は行儀よくて、騒ぐような子ではないのだけど、次第に「オナカへったねぇ」「まだうごかないのかなぁ」なんて高く清らかい声でお母さんに話しかけているのが聞こえてきた。

どうやら、急いで列車に乗った都合で、食べ物や飲み物を持って来なかったらしい。

この特急列車には車内販売もないから、この親子は何も口にするものがないのだ。

なにかあげることのできるものはないだろうかと、僕はカバンの中をのぞいた。

運良くミカンが入っていた。

今朝用意していたものがそのままカバンの中に残っていたのだ。
つぶれてもいないし、これなら3歳でもだいじょうぶだ。

母親は丁寧に、感謝の意を述べて子どもにミカンを与えていた。

その後も、別の乗客がこの親子に弁当を分け与えるなどして、何とか過ごせた。

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僕は本を読んで過ごした。

通常ならば、松江-米子間は特急に乗れば24-5分程度だ。
それが、3時間も経過している。

おまけに外は真っ白で、見えるものは時間とともにどんどん雪に覆われていく。

見上げると、電光掲示板には、この車両が「自由席」車両であることを示すため

『自由 5』

と表示されていた。

その文字が、この状況に対する皮肉にも見えたが

励ましとして捉えることにした。

なんとかなるだろう。

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暖房もさほどきかなくなり、コートに身を包んで半身になりつつ座った。

雪はどんどん積もるばかりで、窓も白く覆っていった。
今夜はそのまま列車内で過ごすことになるだろうという気持ちでいた。

哀れなのは隣の親子であったが、食べ物のの件ではもう何もしてあげられない。

手元の本を一冊読み終えたところで、列車は動き始めた。

それまで何度も動いては停車してを繰り返していたので、今度は、期待せずにいた。

それが良かったのか、すんなり駅ホームに着いた。

というか
本当に駅の手前で止まっていただけだったのだ。

移動距離は少なかった。

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駅に着くと、1番乗り場だったので
すぐに境線列車の待機している0番乗り場に向かった。

大きなボタン雪が降り積もるホームではあったが、慎重に小走りして向かった。

境線列車に乗り込んで、車掌さんに出発予定を聞いた。

・・・やはり、当面分からないということだった。

先ほどの男の子の影響か、僕もオナカがすいたので、駅の外に出て何か食べようと思った。
正確にいうと、ラーメンを食べたかったのだ。

改札を出るとビックリした。

人が溢れかえっていた。
みどりの窓口に行列をなす人、駅員の説明を聞く集団。
怒鳴るおじさん。

駅の外にはタクシーを待つ長蛇の列。

列車は全線、動かないということだった。

先ほど乗っていた特急列車にも境線列車にも、まだ人は多く乗っていた。

この先どうするのだろうか。

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発車する際にはアナウンスが流れるということだった。

なので、僕は駅の本屋で時間をつぶした。

しばらくしても、動きそうにない。

コンビニで肉まんを買って食べた。

寒い時に食べる、熱い肉まんは腹にも心にもしみた。

そう言えば・・・ということで
先ほどの親子のことを思い出したので、いくぶんかの食料と飲み物、そしてプリンとチョコレートを買って、改札を通り、再度特急列車に戻り、届けにに行った。

男の子が、丁寧に「ありがとーございます」と言っていたのがかわいらしかった。
良い子だったな。

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しかしながら
もはや、列車は動かないだろう。

タクシーも乗るまでにかなり時間がかかりそうだし、乗ったとしても家にたどり着けそうにない。

僕は駅前ホテルに泊まることにした。

大晦日

コメント

  1. meguko より:

    Unknown
    みかんの男の子・・・。
    kazzさんステキです。
    心が温まるお話ですね(*^_^*)

    それにしても、いつもに増して誤字が多いのは・・・お疲れのためでしょうか(^^♪

  2. 某Dr より:

    あけましておめでとう
    今年はなかなか強烈な年明けでしたね。
    431号の方は防風林の松が倒れて通行止めになったとかいう話も聞きましたし、うちの職員も例の立ち往生の中で2晩すごした奴とか、特急「おき」の中に30時間閉じ込められた奴とかいろいろいました。
    僕も連日の雪かきで全身筋肉痛です。

    今年も宜しく。

  3. kazz より:

    >megukoさん
    ありがとう。
    五時・・・誤字。
    疲れていなくても多いのだよね。
    気づいた分はなおしたけども・・・
    (・_・)
    まだある(笑)?

  4. kazz より:

    re:あけましておめでとう
    >某Drさん

    開けましておめでとうございます!
    本年もよろしくお願いいたします!

    今回の被害はすごかったですね。

    僕も筋肉痛で大変です。
    翌日に筋肉痛になったのが、せめてもの救いです(笑)!

  5. meguko より:

    誤字
    しば楽・・・

    くらいですかねぇ(^_^;)

    でもなんだか情景描写が小説のようで、好きですこの日記。

    人には厳しいmegukoでした(^^ゞ

  6. kazz より:

    re:誤字
    >megukoさん

    しば楽・・・
    指摘ありがとうございました!
    修正しておきました!

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