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日記

夜中

カルテの記載も終わったので、
ゆっくりと病棟をまわって担当患者さんのところに行く。

僕の担当患者さん、今は9人。
その他、気になる人のところも回る。

最上階のICU(集中治療室)から始まり、各階を部屋を廻りながら降りていく・・・

そうやって
最後の内科の病棟につく。
おじいさんの部屋にそーっと入ると、、幽霊でも見たかのように眼を丸くされた。

「まだおるかっ!?」

と、おじいさん。

少し前まで死にかけていたおじいさんだ。

「もうすぐ帰りますよ。具合はどうですか?」

と声をかけると、
寝ていた体を起こして、テーブルの上の小さなノートを手に取られた。

「ホレホレ・・・」

と言って、ノートの途中のページを開いてみせてくれた。

おじいさんが開いたのは今日の日付の日記。

『聞いとれよ』という顔をして、おじいさんは日記の朗読をはじめられた。

----------------
体ノ具合ヨシ。
午前ト午後ノ リハビリ モ具合ヨシ。
特ニ午後ノ リハビリハ 調子ガ良イ。
家に帰エレルヤウナ気ガスル
----------------

毅然とした態度で読み上げられたが、

読み終えた後に

エヘヘ
と照れ笑いをして、顔をくしゃくしゃにして僕を見るおじいさんは楽しそうだった。

このおじいさんを
元気で家に帰したいと

そう思った。

コメント

  1. cyama より:

    Unknown
    本当に良かった!「病は気から」って、こんなに見事に証明して下さって。                              長生きすることが、必ずしも幸せとは限りませんが、帰りたいと思える家があって、気にかけてくれる家族がいるなら、おじいさんには、元気で、長生きしてほしいですね。             

  2. kazz より:

    病は気から
    >cyamaさん

    こんにちは

    「病は気から」
    この仕事をしていて、本当にそう思います。

    心に活力が生まれた人は、良くなる。
    「活気」だとか「意気消沈」だとか、そういった心のあり方が、病気や人生に大きく影響するのは確かです。

    おじいさんが日記を読み終えるのをみて、本当に感動したんです。
    ここまでくればもう大丈夫だろうなと思いました。

    最大限のサポートでもって、元気に長生きしてもらいたいと、そう思いました。

  3. ひらかな より:

    夜中に
    ちょっと間違えたらえらいことになりそうですが、
    人間関係ができているからこその技ですね・・・
    元気になって家に帰れる日を
    私も陰ながら楽しみにしています♪

  4. kazz より:

    re:夜中に
    >ひらかなさん
    ぁ・・・

    大丈夫です!
    常識的な範囲での「夜中」です。消灯前の。

    病棟ぶらぶら徘徊するのスキなんです(笑)。

    応援有り難うございます!
    皆さんの期待を背負って、できる限りのことしますね!

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